――まさに今生きる人々を描くというところから、2020年が舞台になったのですね。現代、2020年ならではということで施した演出にはどういったものがありますか?
「現代的なところのひとつでいえば人物描写ですかね。『女らしい』とか『子供らしい』とか、ステレオタイプにしない感じで描ければいいな、と。また、『国って何なのか?日本人だからどうだとか、それってどういうことなのか?』を考えました。ニュートラルというかあまり自分の生まれにこだわりすぎていないような形の人物を作って、そこから先へ進むために何か編み出していくような流れを意識しています」
――“国が沈んだ後の日本人の心”というテーマについてお聞かせください。
湯浅「『国が沈んだ後、どうなるんだろう?』というところを小松左京さんは描かれたかった、と聞いていたので、本作では“その後”の世界を含めて描くことに意味があると思っていました。
日本が沈没するとなったら、人はどういう気持ちになるのだろう。どういう行動を取るのだろう? 今も日本人は国や政治がダメだと言いながら、何だかんだそこから恩恵を受けて、安全な生活やおいしい食べ物を得ている。もし日本沈没のような事態が起きたら、今まで自分が何に守られていたのか、誰が作ったものの上に立っていたのかということを考えると思うんです。この作品をきっかけにして、そういうことも想像してみてほしいですね」
――最後に、湯浅監督が本作を通じて受け取ってほしいメッセージをお聞かせください。
湯浅「これまで『日本沈没』は何度も映像化されていますが、個人とか家族といったところにフォーカスをしたのは、今作が初めてだと思うんです。オリンピックを目指す少女、YouTuber、キャリアウーマン、引きこもりの少年、など多種多様な人物が出てきますが、いろんな考え方を持ついろんな人がいることをこの作品を通じて感じてもらえたら、とても嬉しいです。
人はさまざまな恩恵を受けている。そして、恩恵をくれた存在のために人は生きていくと思うんです。それが人かもしれない、環境かもしれない、国かもしれない。僕は制作を終えてそんなことを思いました。日本が沈没してしまうなんて怖くて恐ろしいですが、それを凌いだ後、また日が昇り、人々は立ち上がっていく。そんな風に観てもらいたいですね」
沈没するはずのない国家というシステムが沈没するとき、人は生きていくためどういう選択をし、どうやって前を向いていくのか。究極の状況に置かれた人々の生きざまを描く「日本沈没2020」。劇場編集版は11月13日に公開する。
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