“ネットとテレビの連動”の新たな試み 「#(笑)動画作ってみた」
昨年秋、NHKが「ネットで決戦!#(笑)動画作ってみた」と題したコンテンツを公式ホームページでスタートさせた。“絶対に笑える3分動画”というお題のもと、5組のクリエーター陣が制作した動画の人気投票が行われ、上位3組が2回戦に進出。ことし1月の人気投票の結果、優勝作品が決定し、勝者は新作動画を制作する権利を獲得した。
この一連の対決の模様が、3月29日(水)にNHK BSプレミアムで放送。MCにでんぱ組.incを迎え、コアなオタク目線から「ネットで絶対に笑える動画」とは何なのかを探っていく。
ネットで展開された企画をテレビで一挙放送するという、新しい形の“ネットとテレビの連動”企画について、佐多慎也プロデューサーと林貴子プロデューサーに聞いた。
──そもそもの企画の発端はどんなところだったのでしょうか。
林「以前にも、5分番組を制作して人気投票を受け付けるという企画をやったことがあるんですが、あの続きをやりたいね、というのがあって。一方で、編成も『ネットとテレビの融合って何だ?』ということを追究してみたいということで、その二つの考えが合わさった感じですね」
佐多「ただ今回の企画に関しては、『続きは来週!』という既存のテレビの作り方のリズムに合わないという意見もあって。だったら初めに全てをネットで見せてしまおう、ということになったんです」
──最終的にテレビ番組として放送することは最初から決まっていたわけですね。
佐多「はい。ですから今回は全部ネットで配信してからテレビで放送する、というのが実験的なところで。テレビ放送の時点で投票結果は分かっているし、その上で興味がある人に見てもらうという、いわば“まとめサイト”的な発想なんです」
林「そうですね。連ドラをネット配信や録画で一気見する感じ、というか」
──作品を寄せている5組のクリエーター陣はテレビ畑、広告畑、YouTuberとさまざまなジャンルの皆さんですが。
佐多「広告業界の方々は、作品をゼロから作り、それを世に拡散することを生業としています。一方、YouTuberの方たちにとっては、作品を通じて自分のフォロワーとコミュニケーションを取ることが第一義。それぞれテレビマンの感覚とは作り方が違って面白かったですね」
林「YouTuberの方が作る動画って、会議室でデジカメで撮ってるような映像で、テレビ畑の人間からすると正直、少し違和感があったりするんですけど、何か強烈に“刺さる”んですよね。テレビとはまた違った引っかかりがある。NHKの職員の中にもあれが一番面白かったという人もいて、動画の良し悪しの基準がよく分からなくなってきましたね。『面白いって何だろう?』みたいな(笑)」
佐多「見てくださる方との距離感も、ネットとテレビでは大きく違うと思います。でんぱ組.incの皆さんも、かっこいいライブの映像よりも、日常のハプニングやスマホで撮ったものの方がアクセスが多かったりするらしいですから。」
──今回の企画を通じて、見えてきたものはありますか。
佐多「テレビは最大公約数を求める媒体ですから、誰にでも分かるものでないといけない。でも、ネットではそのやり方だとユーザーには届かないんです。むしろ、“分かる人が分かればいい”という作り方が有効だったりする。その違いが面白いなと。とはいえ、どんなに面白くても、そもそも見てもらえなかったら埋もれてしまうわけですけど」
林「これまで、テレビとネットの違いとして、『テレビは、ぼーっと見ているだけで流れてくるから偶然の出会いがあるけど、ネットは自分で探さないといけないから、自分の好きなものしか見られない。今まで知らなかった面白いものに出会えない』というような定説があったと思うんですが、今はネットでも、まとめサイトというものがキュレーションしてくれて、広まっていくルートができているんですよね。ちょうどこの企画をやっているときに、ピコ太郎さんの『PPAP』があんなことになって、羨ましいなぁ、なんて思って見てましたよ(笑)」
佐多「今回優勝した人の作品にしても、『こんなバカな動画があってさ』なんて、人に言いたくなるところがある。拡散させるモチベーションになるというか、いわゆるバズりやすい動画なんですよね」
──番組では動画対決以外にも、ネットをめぐるさまざまなトークも展開されるようですね。
林「スタジオトークではキングコングの西野亮廣さんもお呼びしたんですが、『ネットは、マスに向けたメディアでありながら、1対1のメディアでもある』という西野さんの考え方には学ぶべき点は多かったですね」
佐多「でんぱ組.incの皆さんも、自分たちの認知度をどうやって上げていったかという実体験を聞かせてくれて、とても面白い内容になっていると思います」
3月29日(水)夜11.15‐0.45 NHK BSプレミアム