【テレビの開拓者たち / 大根仁】「常にポップなものを作り続けたい」

2017/09/09 22:00 配信

芸能一般

「演技者。」で、自分はメジャーとサブカルをくっつけるのが得意なんだと気付いた


「ハロー張りネズミ」最終話(9月15日[金]、TBS系)では、徳川家再興を託された人物から埋蔵金発掘の依頼を受けたゴロー(瑛太)らが暗号解読に挑む©TBS


――今、“芝居のニュアンス”というお話がありましたが、脚本に書かれたキャラクターを実際に役者が演じることで新たに見えてくる部分はあるんでしょうか。

「そういうことは多いですね。今回は脚本を書く上で、ゴロー(瑛太)は最初からほぼ当て書きだったんですけど、かほる(山口智子)や蘭子(深田恭子)は、現場で山口さんと深キョンが演じてるのを見たときに、意外とこの2人のキャラで遊べるなってことに気が付いて(笑)。2人とも、言えば何でもやってくれるんですよ。9話(9月8日放送)のヒーローショーのシーンなんか、悪ふざけ以外の何物でもないですから(笑)。山口さんも出演されていた、三谷幸喜さん脚本の『王様のレストラン』(1995年フジ系)で、レストランの従業員がコーラスの練習をする、その半日だけを描いたエピソードがあって、このヒーローショーの回は、そのオマージュでもあるんですけどね。それにしても本当に、山口さんが想像以上にノリノリでやってくれて。『これ、オンエアして大丈夫か?』っていうくらい(笑)」

――初のプライムタイムのドラマということで、大根作品を初めて見るという視聴者も多かったと思うんですが、その辺りについては意識されましたか?

「もちろん、キャスティングとか画(え)のルックとか、間口が広くて敷居の低いものにしたいなという意識はありました。ただ、撮っているうちに、どうしても深夜テイストが出てしまうというか(笑)。これはもう自分の癖で、抜けないものなんだろうなと」

――では、これまでの活動を振り返って、ご自身のターニングポイントになった作品はありますか?

「やっぱり『演技者。』ですね。僕が全ての作品を演出したわけではないんですが、大好きなケラリーノ・サンドロヴィッチさんの『室温』は、絶対に自分で演出したいと思って、自分でケラさんに会いに行って、許可をいただいたんですよ。それぐらい思い入れの強い作品だし、あと、“フジテレビ”とか“ジャニーズ”というメジャーなものと、“小劇場演劇”というサブカル的なものと、そのメジャーとサブカルをくっつけるのが自分が得意なんだと気付いたのが、この『演技者。』なんですよね。その自分の資質みたいなものが、『モテキ』なんかに引き継がれてるんだと思います」

――大ヒットした「モテキ」も、ターニングポイントとなったのでは…?

「うん、そうですね。それまで10年くらい深夜ドラマを作り続けてきた中で、放送直後からあそこまで大きなリアクションがあったのは、初めての体験でしたから。これはムーブメントになっているんだなっていう感覚がありましたね(笑)。当時広がり始めたTwitterの盛り上がりもすごくって、見てる人たちはこういうものを求めてたんだなっていうことも実感できたし。

僕は、革新的な作品を作ってきたとは思ってないんですけど、深夜ドラマ…特にテレビ東京の深夜に関しては、『俺が作ってきたぞ』っていう自負はあるんですよ(笑)。テレ東の深夜枠は、何というか、草木も生えていない荒地の石を一個一個どかすような作業から、こつこつと作り上げてきた場所なので、『モテキ』が当たったときは、やっぱり感慨深いものがありましたね。で、そこから映画版も作ることになって、その映画も幸いヒットして。それがまた、『まほろ』とか『リバースエッジ』にもつながっていったわけで、そう考えると、キャリア的には間違いなく、『モテキ』をきっかけにして、いろいろと変わっていったんだと思います」