1954年に製作され、900万人を超える日本人が観た映画。それが「ゴジラ」です。僕がゴジラの生みの親のひとりである田中友幸プロデューサーに命じられて「ゴジラVSビオランテ」の製作に就いたのは、1986年。
子供の頃からスクリーン上の大文字で見てきた「田中友幸」のアシスタントとして学んだこと、それは、「ゴジラは怖いけど可愛い」という教えでした。この二律背反こそがゴジラの魅力、そして魔力です。これを座右の銘として、「ゴジラVSデストロイア」まで6本の「平成・VSシリーズ」でプロデューサーを務めました。
近年では、庵野秀明監督が手掛けた「シン・ゴジラ」(16)、山崎貴監督による「ゴジラ-1.0」(23)など、それぞれの監督が作家性を全編に込め、創作への熱意と類稀なイマジネーションによって、アート性を高めた素晴らしいゴジラ映画が誕生しています。
デジタルの黎明期に開花した歌舞伎のような外連味たっぷりの光線や光粒子、金粉を駆使した川北紘一特技監督による特撮は「平成・VSシリーズ」の大きな見どころのひとつですが、そのアナログとデジタルを融合させた視覚効果は、現代にも受け継がれていると感じます。
ゴジラが、老若男女、国境、人種を問わずここまで愛されているのは、認知されたキャラクターとしてのゴジラの根源的な魅力によるとも言えるでしょう。これからも、作家性の強いゴジラ映画が生まれる期待と予感を抱いています。新しい才能による新たな表現と装いを纏いながら、ゴジラは愛され続けることでしょう。
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