「西郷どん」方言指導者とはどんな仕事なのか撤退解剖

2018/02/19 14:39 配信

ドラマ

迫田孝也が“薩摩ことば”を伝える上での苦労や、魅力などを語ってくれた

迫田孝也田上晃吉が、大河ドラマ「西郷どん」(毎週日曜夜8:00‐8:45ほか、NHK総合ほか)で、出演者に“薩摩ことば”を教える方言指導を担当している。

2人はどちらも鹿児島出身の俳優で、迫田は田上の5つ上の先輩にあたる。第1話から話題を呼んでいる薩摩ことば。出演者たちも口をそろえて「覚えるのが難しい」と明かすこの方言を、教えるにあたってどのような苦労があるのか、また、どんな魅力があるのかを聞いた。

――方言指導とはどのような仕事か教えてください。

迫田:まず、完成前の台本が届いて、それを薩摩ことばに直すんです。そして、それを全国の方が分かるレベルに合わせて台本が完成するんです。その後は、田上さんと全せりふを「速いバージョン」と「ゆっくりのバージョン」に分けてテープに吹き込むんですね。そのテープを演者の皆さんに送って、覚えてきてもらって、そこからが現場です。

現場で出演者の皆さんが発するイントネーションが、台本の雰囲気と違うものであった場合や、せりふが増えたり、削られたりしてイントネーションが変わった場合、そういった点を修正しています。また、エキストラの方たちにせりふがほしいとなった場合は、新しくせりふを作ったりもしていますね。

田上:現場でのシチュエーションや役柄に合わせて、台本にはない新しい言葉が作られていくことも多いんです。演者さんの「この場でこう言いたい!」というオファーに対する適切な言葉を見つけるのは大変ですね。

僕は大先輩たちの方言指導を担当しているんですけれど、きれいな女優さんたちは迫田先輩が全員担当しているんですよ(笑)。

――方言を教える上で難しい点はなんですか?

迫田:まず、僕らのイントネーションをそろえるというのが一番難しいですし、そこに一番力を入れています。住んでいる地域によって同じ鹿児島弁でも違うんですよ。そこを合わせないと聞いている方、役者人は「どっちなの?」と気にされますので、最初の作業として大切にしていますね。

――どちらの地域に合わせているんですか?

迫田:それは、鹿児島というところは縦割り社会なものですから(笑)!

田上:本当、現在はその通りです(笑)。

迫田:最初は違ったんです。田上さんの方が他の大河ドラマでも薩摩ことば指導の経験があったものですから、そのやり方を盗みつつという時点では僕が合わせていたんですけれども、徐々に徐々に「ここは僕のに合わせてほしい!」となっていきましたね(笑)。

――地域でイントネーションのニュアンスが違う代表的な薩摩ことばは何ですか?

2人同時:鳥刺し!

迫田:鹿児島でロケをしている夜、だいたい飲みに行くんですけれど、僕は「鳥刺し」の“さ”にアクセントが入るんです

田上:僕は「鳥刺し」の“し”にアクセントを置いて語尾があがるんです。

迫田:どちらも確かにあるんですけれど、いろいろとリサーチをした結果、8割以上が僕と同じイントネーションだったんです!これがきっかけで…。

田上:僕の自信が…。

迫田:なくなって(笑)。「先輩の言う通り」になりましたね。

――薩摩ことばの特徴を教えてください。

迫田:僕たちは普段から使っているので気付かなかったんですが、皆さんに言われて気付いたのはイントネーションのうねりが多いそうです。鈴木亮平さんをはじめ、そこに戸惑うとおっしゃっていましたね。関西弁のうねりとは逆らしいんです。僕たちが上がるところを、関西弁では下がっているそうです。

――縦割り社会とありましたが、そういった気質はどのように生まれるんですか?

田上:やはり、第1話でも紹介されていた「郷中教育」というものが根強く残っているのかなと。自分も少年団などでスポーツをやっていましたけれど、先輩というのは絶大な存在でした。今回も鹿児島出身の先輩とご一緒なので、会った瞬間から「先輩!!」という感じです。

迫田:祖父や父親にはどうしても逆らえないというのが家族の中では当たり前のことでした。目上の人を敬うという感覚よりは、恐怖心の方が強かったかもしれないですね(笑)。先輩が近くにいたら自然と背筋が伸びる教育を受けていました。

――出演者の方々の方言指導をされていてセンスがいいなと思った方を教えてください。

迫田:皆さんすばらしいと思いますが、その中でもですよ…。鹿児島の女性言葉が好きなので、満佐(松坂慶子)さんや糸(黒木華)さんが上手ですね。糸さんが初めて「んにゃも」という合いの手、相づちを発せられたとき「あっ! それ!」と、懐かしくなるような柔らかい気持ちになりました(笑)。

田上:僕も同じで女性言葉なんですが、水野久美(西郷きみ役)さん。西郷家のおばあちゃんとして大家族を包み込んでいる鹿児島弁が、僕のおばあちゃんが話している鹿児島弁と本当にそっくりで、グッときました。

――撮影現場で、はやっている薩摩ことばはありますか?

迫田:「もす!」。「おはようございもす」とか、語尾に付ける言葉です。最初、皆さん丁寧に「おはようございもす」と言って現場に入って来てくださったんですが、ある日から「もす!」とだけ(笑)。それがあいさつになりましたね。

田上:ぎゅっと縮まりましたね(笑)。

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