──「わろてんか」に携わっていた期間は、どのくらいですか?
執筆のオファーを頂いたのは、2年ほど前になりますが、企画がかたまったのは、(放送開始の)1年ちょっと前。それからリサーチをし、26週分のストーリーを練っていって、脚本を書く作業に入り…長い間携わってきました(笑)。
──放送が始まってからも書き続けるという点では、キャストの皆さんの演じ方が脚本に影響を与えることもあったのでしょうか?
ありましたね。特に、濱田岳さんや広瀬アリスさん、徳永えりさん、岡本玲さん、堀田真由さん…。他にもいらっしゃいますが、そのお芝居が素晴らしくて。
私が映像を見る前に、撮影現場からそういった声が届いていましたし、役にのめり込んでいるのが、画面を通して伝わってきました。
「この人たちをもっと描きたい!」と思って、台本にも反映させていきました。
──確かに、てん(葵わかな)と藤吉(松坂桃李)の物語でありながら、風太(濱田岳)とトキ(徳永えり)の夫婦も人気でしたし、ずっと見ていたくなるキャラクターが多かった印象です。
ヒロインだけではなく、「全員が主役」のドラマになっていきました。
でもそれは、てんが太陽のような笑顔でみんなを照らし、その光でみんなが輝いていたからだと思います。
──太陽のようなてん、頼りないけれど魅力的な藤吉、絶対的王子様の伊能(高橋一生)…というように、登場人物がそれぞれ粒立っていました。キャラクター設計や配置について、意識されたことはありましたか?
キャラクター設計は、まずはてんを中心に、藤吉、伊能、風太という、全く違ったタイプの男性3人を配置するところから始めました。
彼らは違う立場、眼差しで、てんを生涯に渡って支えていく、重要なキャラクターです。最初はてんを奪い合うような、恋愛的なライバル配置に見える3人ですが、てんを通して、互いに男として引かれあい、絆を結んでいく構造になっています。
また、3人にはそれぞれモデルとなる人物がいるのですが、そもそも個性豊かなキャラクターなので、そこから逆算してヒロインは、彼らを受け入れる懐の深いキャラクターにしました。
伊能は、王子様として描くつもりはなかったのですが、最初の登場の印象で視聴者の皆さんが盛り上がって下さって(笑)。彼は紳士然としていますが、実は人を信じられず、鎧をまとっていた人間です。その鎧を、てんや藤吉が外していく。そういう設計でした。
──ストーリーの面では、“藤吉の死”が一番大きな転換点だと思います。そこで加速度がついて、また新しい物語が始まったという印象を受けたのですが、どんな意図があったのでしょうか?
藤吉が亡くなったことで、てんは女興行主としてひとり立ちしなければならなくなります。そのてんを支えようと、風太や伊能、北村笑店のみんなが結束していく。
役としてもそうですが、まだ19歳のわかなちゃんご本人も、「私が座長だ」という覚悟をしたんじゃないでしょうか。そういう気概を感じました。
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