「わろてんか」脚本・吉田智子にインタビュー!クライマックスを戦時中にした“深い意図”とは

2018/03/27 07:00 配信

ドラマ インタビュー

てんの涙は「本物」です


──いま物語序盤の映像を見ると、たった半年間とは思えないほどの葵さんの変化に驚かされますよね。

本当にそうなんです! 演技にも奥行きが出てきましたし、隼也(成田凌)の母親としても違和感がない。戦時中パートでは50代のてんを演じているのですが、とてもいい表情をしていると思いました。第25週でてんが泣くシーンは特に、「本物だ」と思いました。

笑顔はじける少女期のてん(C)NHK


50代まで演じ切る(C)NHK


──クランクアップ時には、葵さんにどんな言葉を掛けられたのですか?

「本当にお疲れ様!」と。体調をかなりケアしながら臨まれたそうで、「大変だったね…」という話をしました。てんとして、やりきれたこと、やれなかったこと、その沢山の苦労や悩みを思うと、彼女への感謝で胸が一杯になり、泣けてきました。

本作を貫く「笑い」とは


──最終週の見逃せないポイントを教えてください。

北村笑店の家族が、戦争でバラバラになります。大阪の街も戦火で灰じんに帰し、人々は俯き、途方に暮れます。その中でてん達が、「笑い」を支えに明日に向かってどう立ち上がっていくのか…それが見どころです。

第1週からふってきたものが回収されていき、最後にちょっとした仕掛けが用意されています。今までの“朝ドラ”にはない、異色の最終回です。

北村笑店の解散という苦渋の決断を下す(C)NHK


──制作発表会見の時に「笑いを大阪に広めた“魂”を描けたら」と仰っていましたが、その「魂」とは何だったと思いますか?

私自身が、昔から疑問に思い、何度か使ってきたセリフに、「生き物の中で、人間だけが笑う。それはなぜなのか…」というものがあります。人間は、恋愛から人間関係まで、苦しみが多く、時に争い、果ては戦争まで起こす愚かな生き物です。それを乗り越えるために生まれたのが「笑い」ではないでしょうか。

つらいことがあった時の「笑いの力」は大きいと思うんです。「面白ければいい」という「笑い」ではなくて、前に進むための「笑い」、それが笑いの真髄だと思います。

──第1週で「つらい時こそ笑うんや」というせりふが印象的に登場し、最終週で戦後の復興が描かれます。そこにも今うかがったテーマが表れているのですね。

そうです。この構成は、初めから決まっていました。枝葉の部分は変わりましたが、この幹は変わっていません。

新一(千葉雄大)から掛けられる言葉「つらい時こそ、笑うんや」は、本作の主軸に(C)NHK


──てんと藤吉の「ロミオとジュリエット」展開から始まり、最後はずっしり。「胸キュン」の朝ドラから、だいぶ印象が変わっていきました。

私は着地点が見えていたので、あまり印象が変わったというイメージはありません。

ただ、第1週の冒頭で、テーマを提示した方がいいのか、迷いはしました。そういうプロットも書いてみたりしました。

分かりやすいのは、まず戦争が出てきて、瓦礫の中でたくましく笑う人々を描いて、「笑うということ」ということの意味を問いかけてしまう手法です。もしくは、「これから笑いの変遷を描きますよ」という、芸人さんたちのモンタージュを入れるとか。

そういったこともプロデューサーや監督と話し合ったのですが、役者さんも視聴者も、どこに向かうか分からないのが“朝ドラ”の面白さだと思いまして(笑)。

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