「何もかも痛快に吹き飛ばすドラマにしたかった」「コンフィデンスマンJP」脚本家・古沢良太ロングインタビュー

2018/05/13 08:00 配信

ドラマ

「コンフィデンスマンJP」脚本の古沢良太氏撮影=大石隼土


長澤まさみらが扮(ふん)する男女3人の詐欺師が縦横無尽に暗躍する痛快コメディー「コンフィデンスマンJP」(フジテレビ系)。敵も味方もだましだまされ、毎回展開が読めないスピーディーな展開はまさに、当代きっての人気脚本家・古沢良太の十八番ともいえるスタイル。だが実は彼にとっても、詐欺師を主人公にしたこの手の“コン(コンフィデンス=信頼)ゲーム”ジャンルは初挑戦だという。

「2年ほど前に、『リーガルハイ』シリーズ('12年ほかフジテレビ系)などで共働した成河広明プロデューサーから『また何かやりましょう』と言われていました。僕にとって詐欺師ものはいつかやりたいと思ってはいたけれど、作るのがちょっと大変なんで二の足を踏んでいたんです。でも成河さんから入社試験でも映画『スティング』('73年。詐欺師映画の名作)みたいな作品が作りたいって言ったほど好きなんですって熱弁されて…説得された感じです」

「作るのが大変」な予感は、執筆が始まってから実感することに。

「やるからには一話完結で、毎回毎回悪いお金持ちをアッと言わせる手段で爽快にだます…のを10本作ろうっていうのがもう、むちゃな話で。そんなにだます手口もバリエーションもないんですよ。だます相手の設定や、どんな手段でだますのか、だませないのか、失敗しても得るものはあるのか、みたいなことですよね。それを全部作っていくのは大変で。でも毎回そう鮮やかにできなくても、時々すごくいいのができるんじゃないかぐらいの気持ちで、勝算なく作っていきましたね」

詐欺師ものには、共通する自由な空気があると彼は言う。

「僕も『スティング』はもちろん、『ペテン師とサギ師 だまされてリビエラ』('89年)も大好きで、昔から見ています。今回に関して言うと、世の中がモラルとか倫理に対して厳し過ぎるんじゃないかと日ごろ思っていて。そういう常識やモラルや、もっと言えば法律とかっていうことと全く関係なく生きている人を描きたいと思ったんです。詐欺師にしたのもそういう理由で、特に主人公のダー子(長澤)がそうですね。ちょっと不謹慎で、真面目な世の中の雰囲気みたいなものを小ばかにして吹き飛ばそうと思って。このドラマ自体、そういう意気込みで作ったんです。でもまぁ、詐欺師は誰がどう考えても悪い人なので(笑)、どうすれば愛すべき詐欺師になるかというのは苦労した点かもしれません」

自由奔放で変幻自在なダー子、臆病で生真面目なボクちゃん(東出昌大)、経験豊富な英国紳士といった風情のリチャード(小日向文世)。3人の主要キャラがとにかく生き生きとして魅力的なのも、そんな誕生秘話を聞くと納得だ。

「これはゲストの話なので、レギュラーの出演者はなるべく(人数を)少なくしようと考えました。最初はダー子の存在を際立たせるために正反対の人物が必要なのでボクちゃんを作って、あとは準レギュラー的な人を何人かと思っていたのですが、準レギュラーって、俳優さんのスケジュールの都合上難しいみたいで(笑)。じゃ3人かなとなって、リチャードが生まれました」