「NHKスぺシャル パンデミック 激動の世界」が伝える社会への視座<大越健介キャスターインタビュー>
――大越キャスターはずっと報道やスポーツ番組に携わられてきました。そのお仕事を続けられてきた中で心にあることお聞かせいただけますか。
大越:政治が一番長いのですが、いろんなジャンル、分野を取材してきて思うのは、自分は今どの登山道を行っているのかということです。目指すのは、結構壮大なことを言うと、次の世代に少しでも良い社会を残していきたいということですね。
山が一つあって、その頂きを目指そうとすると、登山道はいろいろとあり、いろんな道から登ることができます。
社会が成長し、より良い社会、より豊かな社会、より公平な社会、そういう理想像を目指す上では、スポーツもその要素だし、政治はもちろん、経済活動も、文化活動も、いろんな社会福祉もそうです。より良いところを目指そうとする志を持って、いろんな道からたどることができると思うんです。
そのために自分が今歩んでいる道は、スポーツ、報道だったり、「NHKスペシャル」のシリーズを作ったりすることですが、目指すところは一緒。少しでも恥ずかしくない社会を後世に、自分の子どもや孫に残したいという、その思いで臨んでいます。
――今述べられたことを考えはじめたのはおいくつくらいのことですか?
大越:50歳くらいからですかね。そろそろ自分もそんなに一線でバリバリ働くことができない年齢だと思うと、高度経済成長の、良い時代に育ってきた自分だけが勝ち逃げしてはだめだなと。焦りに似た気持ちがあります。糸口だけでも残して去りたいと。
――若者への期待感も大きいのでしょうか?
大越:最近の若い人たちはすごいと思いますよ。むしろ私の世代の能天気さがもっとあっていいのにと思うくらい、みんなかっちりしているし、ひたむき。ひたむき過ぎるところを気の毒に思うくらいですが、そういう社会にしてしまったのは自分たちのせいだという思いもあり、複雑です。だから、若者が少しでもホッとできる社会を作るためのインフラ作りに役立てたらと思っています。