「深海WANTED7」がとらえたヨコヅナイワシの迫力SHOTを公開!鈴木香里武の裏側解説付き
5月30日放送の「爆笑問題の深海WANTED7 新種の深海モンスター!奇跡の遭遇SP」(フジテレビ系/テレビ静岡制作)で、2021年新種登録されたばかりの巨大深海魚「ヨコヅナイワシ」を捕獲する様子が放送された。発見は世界で6体目。この貴重な深海の帝王がスタジオに登場し、爆笑問題、ココリコ・田中直樹ら出演者たちは色めき立った。
「深海WANTED」は、2015年から始まったテレビ静岡入魂のシリーズ。深海にカメラを沈めて、そこに生息する生き物の撮影する取り組みをずっと続けてきた。
今回は日本最深の湾である静岡・駿河湾と沖縄の海を舞台に、深海撮影プロジェクトを展開。その一つ、駿河湾でのプロジェクトにおいて、撮影を狙っていたヨコヅナイワシを、驚いたことに捕獲してしまった。
番組では、海底にすむ生物についてより広い範囲を調べるため、研究機関と連動しながら「底はえ縄漁」を実施。50年以上の深海漁歴を持つ漁師率いる海の男たちが、水深2000メートル地点でポイントを絞り、全長4キロメートルにわたり底はえ縄を仕掛け、8時間かけてこれを引き揚げた。そこに巨大なヨコヅナイワシが掛かっていた。捕獲された魚体は、体長1.4メートル、重さ26キログラム。
巨大深海魚・ヨコヅナイワシの画像をここに公開。ロケに同行し、捕獲の瞬間を目にしていた深海スペシャリスト・鈴木香里武の裏話とともに紹介する。
鈴木香里武が語るヨコヅナイワシ捕獲の瞬間と偉業の意義
――ヨコヅナイワシ捕獲を目の当たりにして思われたこと、その意義について聞かせてください。
鈴木:ヨコヅナイワシは、新種登録されたばかりで、番組で捕獲されたのが世界で6体目。6体くらいだと分からないことばかり。繁殖のこと、幼魚のこと、分からないことが多いんです。この6体目が、東京大学とJAMSTEC(ジャムステック/国立研究開発法人海洋研究開発機構)に送られ、一歩先の研究に進む、大きな手掛かりとなると思います。
生態の疑問については、いろいろあります。まず「青い」という話ですね。JAMSTECの発表した論文を見ると、うろこが青いとか頭部が青いとか、人によってはライトブルーに光って見えたという発言があります。でも、写真では、基本黒いんですよね。ちょっとはがれたところは青く見えるんですけど、黒い魚なんですよね。
でも、船に上がってきたとき、真上から見た僕の目には、本当にライトブルーの魚に見えたんですよ。それは青みがかったという表現ではなくて、青く光っていた。これはぜひ信じていただきたいんです。船で真上から見ていたあと2人くらいだけが「青かった」と表現しています。斜めから撮影していたスタッフは黒く見えたと言うんです。水中に突っ込んでいたGoPro(ゴープロ)カメラの映像を見ても黒いんです。
だからあの青が何なのか、例えば水の中で太陽光を浴びた絶妙な反射で青く見えるのか、その時に生きていたから青かったのか、青かったというのを目の当たりにしたので、JAMSTECの言っていたライトブルーがすごくしっくりきました。だけど、なぜ上げた後あんなに真っ黒になるのかが分からない。
もっと言うと、深海でなぜ青いのかも分からないんですよ。青い必要がない。赤は分かるんです。深海で赤いと目立たない、黒は闇に溶け込めるから分かるんですけど、青い深海魚ってあまりイメージがわかないんですよね。そこが彼らの独特の生態を明らかにするヒントかもしれません。そこは今後の研究に期待します。
あとは、トップ・プレデターという話ですが、どのくらい泳いでエサを捕っているのかという疑問もあります。
水深2000メートルより深いところのカメラに映ってくる魚は、主にソコボウズとイバラヒゲという2種類です。どちらもすごく体は大きいんですが、尻尾がすぼまっているんですね。すぼまった体形というのは、一生懸命泳がないことを宣言しているようなもので、省エネに生きるための体形なんですよ。
海は深くなればなるほどエサの少ない環境だとされています。いっぱいヒレを動かして泳ぐと、疲れてお腹が空く、でもエサがない、弱ってしまうことに陥るんですよね。なので深海魚は深いものほどなるべく動きたくないんですよ。
大きな尻尾を持ってしまうと、その分筋力を使う。そんなもの持ちたくない、尻尾は要らないからと細くして、その代わり体に脂をたくさん蓄えて、脂は水に浮きますので、あまり身体を動かさなくても浮いていられるように進化したんですよね。
それが主流の、2000メートル以深の世界で、なぜヨコヅナイワシはあんな立派な尻尾を持っているのか、前から思っていましたが、実物を見ても、根元はものすごく太くて、いかにも筋肉の塊、がっつり泳げますよという身体をしていました。あの世界で、あの体型をしている理由って何だろう、それでいて、トップ・プレデターとして成り立っているので、けっこう遊泳力があるんじゃないかとか、深海は我々が思っているよりエサが多い環境なんじゃないかとか、もしくは、2000メートルで見つかってるけど、もっと浅瀬まで泳いでいるんじゃないかとか、いろんな疑問が本人を前にして浮かんできました。
――ヨコヅナイワシを見たスタジオゲストの方の発言で印象に残っていることはありますか?
「古代魚みたいだ」という発言はありましたね。質感は、うろこがすごくしっかりとしていて、口が大きく、黒々としていて、尻尾も大きいからシーラカンスっぽいんですよ。大きさも、あれくらいのシーラカンスはいますからね。
「口の中が黒い」と、口をのぞいておっしゃっていた方がいましたね。これはすごく大事なポイントなんです。僕も船上で口の中の写真をいっぱい撮りましたけど、真っ黒なんですよ。これは一部の深海魚に見られる現象で、例えばアカムツ、ノドグロとも呼ばれる魚も口の中は真っ黒なんですね。
いろんな説がありますが、有力なものとしては、光を反射しないように黒くしているというものですね。深海魚は光のない世界だからこそ、ちょっとの光にも敏感です。エサを見つけて追い掛けて、捕食しようと口を開けたときに、何かの反射で口の中が反射で光ったとしましょう。口の中が白いと光っちゃいますよね。それで気付かれて逃げられるとしたら、やがては生存できなくなってしまいます。プランクトンに光を照らされても反射しないように口の中を黒くしてるんじゃないかという説があるんですね。
だから、トップ・プレデターである、ヨコヅナイワシも、捕食に特化して進化したとしたら、あの黒い色もそういう意味があるのかなと思いましたね。
「爆笑問題の深海WANTED7 新種の深海モンスター!奇跡の遭遇SP」は、6月6日(日)までTVerとFODで見逃し配信中だ。