――では現在の「サトミツさん=トイレ好き」というイメージは、「アメトーーク!」で確立したかたちですね。
そうですね。僕が持っている素養をしっかり話すことで面白くなるというフレームをつくってくれたと思います。僕の世の中に対する印象を与えてくれたのは完全に「アメトーーク!」ですね。トイレも掃除も“じゃないほう”も、僕にある要素を縁取って面白くしてくれたのは「アメトーーク」です、完全に。
未熟でセンスも何もない自分でもテレビで活躍できる場所があると思えたのは、本当に自信になりました。実力もないし、5角形レーダーチャートだとしたら、かなり偏ってる僕のような人間でも「できること」で勝負できるのだなと思えた瞬間でもありました。
ギリギリ選択肢を削って削って見つかった細い道
――サトミツさんご自身の“戦う場所”が見つかったんですね。
放送作家の仕事をはじめた頃だったのも大きかったかもしれません。このころは作家の仕事をしたり、トイレの研究発表をするイベントを開催すると「芸人なのに…」「何がしたいのかわからない」なんてまだまだ言われ、甲子園のように賞レースを追い求めてひな壇で活躍してテレビに出ることだけが正義だと思われていた時代(そういう意識が強かった時代)なので。
息苦しかったところはありますが、素敵なご縁もたくさんあって「自分といういびつな丸を磨いて仕事にしていく」作業をさせていただけたように思います。決してエリートでもスマートでもないですが、僕にとってはギリギリ選択肢を削って削って見つかった細い道なので、誰に何を言われても関係ない感じでしたね。
――なるほど。
メジャーなものしか許容されない時代がゆっくりゆっくり変わっていきはじめたのも、このころかもしれないです。有名じゃないと存在価値がないかのような空気感は少しずつ和らいでいったように思いますが、当時はまだまだ「知らない=価値が無い」と思わる機会も多かったですね。
僕なんて、今までもこれからもドメジャーな超有名タレントにはならないんで、その尺度で計られたら無価値かもしれないんですが、そんなことないんですよね。無名なバンドでも素敵な曲を奏でて人の心を揺さぶることがあるように、メジャーなバンドのメジャーな曲でも細かいアレンジをした人の名前は世にでないけど必要だったように、僕自身も手柄も知名度もいらないので細々とエンタメに関わりたいなとはっきり思った頃だと思います。