人間国宝に「ショートケーキの食べ方」を聞く、それにしっかり答えてくれる人間国宝
演技力に支えられた2本に対し、「子ども」というフィルターを通して職業人に迫ったのが、#1の「国宝だって人間だ!」と、#2の「子ども記者会見」だった。
「国宝だって人間だ!」は、引率の先生(香取慎吾)が子どもたちを美術館に連れてくるところから始まる。キュレーター(稲垣吾郎)が「奥に国宝がありますよ」と誘導すると、そこに座っていたのは人形浄瑠璃文楽座の人形遣い・桐竹勘十郎だった。
ことし人間国宝に認定される予定の桐竹さんに、実際に人形の動きを見せてもらったあと、子どもたちは素朴な質問をぶつける。「ガラケーですか?」「目玉焼きにはなにをかけますか?」「ショートケーキのイチゴは最初に食べますか?最後に食べますか?」など、大人ならちょっとためらう質問ばかり。
でも、桐竹さんはしっかり答えてくれるのだ。「子どものころの夢は漫画家」とか「朝はパン派」とか「ショートケーキのイチゴは最初に半分食べて、最後に半分食べる楽しみを取っておく」とか話してくれるたびに、聞いてるこちらも「人間……!」という思いが強くなる。まさにタイトル通り、国宝だって人間なのだ……!
週刊文春の元編集長も登場、抜群の対応力でフォローする稲垣&香取
一方、「子ども記者会見」に登場したのは、「週刊文春」元編集長の新谷学。子ども記者たち(香取慎吾含む)が会見場に揃うなか、進行役の稲垣吾郎は新谷さんに「お会いできて光栄です」とあいさつし、慌てて椅子から立ち上がり「こちらこそ」と返す新谷さん。
その後、子ども記者からは「社長と編集長はどっちがエラい?」「スクープ取材中にバレたらどうする?」「政治家や芸能人に怒られたことは?」と、生々しい質問が続いた。途中、香取慎吾が「好きな食べものは?」を食い気味に放り込んだのは、場を一旦和ませるためだったのかもしれない。
人間国宝には素朴な疑問を、週刊誌の元編集長には生々しい話を。どちらも言わば「ストレート」な質問を、子どもが真っ直ぐな目で聞く。そこに稲垣&香取が、抜群の対応力でフォローする。たっぷり時間を使った構成も相まって、見ている側は安心して知的好奇心を満たすことができる。
「子ども記者会見」の最後は、「紙媒体はこのまま続きますか?」という香取慎吾の質問で締めくくられた。ネットの速報性は確かに便利だが、新谷さんの答えは「紙の雑誌がなくなるかというと、そうは思わない」。雑誌にはさまざまな情報が「雑」に詰まっており、新たな興味が広がるからだという。
「ワルイコあつまれ」も、ある意味「雑」が詰まった番組だ。インタビュー企画以外に、勝新太郎のエピソードを絵本にしたり、変な歌詞のダンスコーナーがあったりもする。その「雑」を、稲垣・草なぎ・香取の3人がそれぞれのパフォーマンスを発揮して、最高の形にパッケージする。2回で終わるなんてもったいない。もっと彼らをテレビで見たいと改めて思わせてくれた番組だった。
文=井上マサキ