“誰かと一緒に何かを作り上げたい”という思いが満たされる
純は他人には言えない夫婦の悩みを抱えながら、職場の後輩に思いを寄せられ、女性として揺れていく。
「アラサー、アラフォーの女性からすると、子供を産む年齢のこととか、愛があるのに擦れ違ってしまう関係とか、本当にリアルな悩みが描かれている作品だと思います。しかもそうした繊細な感情を、華美な演出をせずに、表現としてはかなりそぎ落とした状態で見せていくんです。いわゆるドラマチックなうそをつかずに、小さな心の機微や、思いやりの交換を丁寧に描く…そうしたら、信じられないほどドラマチックな瞬間がたくさんあったんです」
是枝裕和監督の秘蔵っ子である広瀬奈々子がチーフ演出を担当。感情をセリフやナレーションで表さず、あくまで演技で見せていく台本にも、役者としてやりがいを感じている。
「撮る前に監督や共演者と段取りを確認する中で、セリフの裏にある感情を『本当はこういうふうに言いたくなった』と、率直に話し合ってみるんです。そうすると、台本で読んだだけでは気付かなかった本当の答えみたいなものにたどり着くことがあって、『宝物を見つけた!』みたいな感覚になれるんです。そんな発見がほぼ毎シーンあるから、本当に幸せ。時節柄、人とのコミュニケーションも薄くなりがちだったんですが、そこで私の中に高まっていた“誰かと一緒に何かを作り上げたい”って思いがすごく満たされるんです」