「100%!アピ~ルちゃん」総合演出・水野雅之が語る新番組制作の裏側『99%は恐怖を感じています』<インタビュー>
――水野さんは、「林先生が驚く初耳学!」「教えてもらう前と後」「プレバト!!」など、さまざまな番組を手掛けてこられましたが、今回新たに番組を作る上で、意識されたことはありますか?
「初耳学」では、知識モンスターの林(修)先生を“壁”として、その“壁”を超えていく雑学を放送するというのが企画を考えた時のコンセプトだったんですが、今回はトレンドを押さえながら楽しく見てもらう企画なので、普段ありとあらゆる情報に触れている川島さんと指原さんを“壁”として、お二人をとにかく楽しませる番組づくりを意識しました。情報感度が高いお二人が楽しんでくれる先では多くの方たちが楽しんでくれるだろうという精神で進めています。
――実際に収録されてみて、川島さん、指原さんの反応はいかがでしたか?
お二人には、収録前の打ち合わせで「VTRで知っていることがあったら言ってください。そう言っていただかないと知らなかったときの驚きが本当かどうか分からないし、今のテレビってそれくらいリアルに作るべきだと思うんです」とお伝えしました。
今回、VTRのクオリティーをものすごく高めないといけない番組だったので、収録前はお二人が楽しんでくれるのかとめちゃくちゃ緊張しましたが、収録後「本当に知らないことだらけでVTRもすごく楽しかった」と言ってくださって、ほっとしました。この番組は、川島さんや指原さんがどう楽しむかによって番組の色が変わっていくと思うので、今後もVTRのクオリティーを高めていきたいと思います。
――番組を作る際、多くの方に番組を見てもらうために意識していることはありますか?
番組を通して発信する情報って「情」と「報」という言葉でできてますが、僕は「情」と「報」の間のどの辺に軸を置いて番組を作るかということを考えています。「情」は“笑い”“感動”を与えるなど、エンタメ要素の高いもので、「報」は主にニュースです。
僕が「初耳学」を作った時代(2015年頃)って、「報」に8割くらい傾いてた時代だったんです。でも、今は新型コロナウイルスの影響もあって、「情」に寄っていると感じます。例えば、コロナ前に放送されたABCさん制作の演芸番組の世帯視聴率が、夜7時台の放送で5%だったんですね。でも、コロナ後に同じ時間帯で再放送したら、視聴率二桁取ったんですよ。そのくらい視聴者の方ってその時々で「情」と「報」を求めるバランスが変わるんです。なので、そこのバランスがパキっとハマるようにいろんな企画を当てていきたいなと思います。
――月曜夜10時台の枠は、「しゃべくり007」(日本テレビ系)や「報道ステーション」(テレビ朝日系)のほか、この秋から綾野剛さん主演のドラマ「アバランチ」(フジテレビ系)も加わりました。この枠で他局の番組と勝負することについてはどうお考えでしょうか。
なかなか厳しい枠ですが、まずは同時間帯1位を目標にしています。「こういうことをすれば数字が取れる」という意識では太刀打ちできない環境であるなと思っているので、最終的に一番高いところに行くためには、愚直に1人ずつ、番組のファンを増やしていくしかないなと思っています。
自分の成功体験ではない方法でいろんな実験をしている
――夜10時台の枠の番組を作る上で、意識されていることはありますか?
夜10時台って以前に比べて視聴率が取れなくなっているんですが、今定着している番組って、情報性よりも“楽しい”番組ばかりなんです。なので、理屈がなくゆったりと楽しめるというものを意識しています。
僕はいつも編集するときに、視聴者を飽きさせないように“腹八分目”のところで次の企画に切り替える構成をするんですが、ゆったりと楽しめる番組にするために、今回のVTRは僕の想定の倍の尺を使って構成しています。「過去にこういう方法で数字(視聴率)取れたもんな」っていう方法を取っ払って、自分の成功体験ではない方法でいろんな実験をしているので、99%は恐怖を感じています(笑)。
――時代の空気を読みながら試行錯誤されているのですね。
1995年~2007年に日曜夜10時台に放送していた「ウルルン滞在記」(TBS系)は、夜10時45分くらいに滞在先の人たちとリポーターが涙ながらにお別れする番組のピークとなる場面が描かれていて。当時は、クライマックスのその場面までみんな見続けてくれていたんですが、だんだん待ってくれない時代になったんです。なので、2015年に立ち上げた「初耳学」では、夜10時1分に驚いてほしいと思って構成を考えました。以降、だんだん情報性よりも理屈なくテレビが見たいという雰囲気がこの数年で高まってきたので、「アピ~ルちゃん」には、今僕が夜10時台の番組を作るとしたらこのくらいのエンタメ性だろうなというものを反映しています。
一方で、バラエティーだけに振っている番組とか、自分に関係ないと思ったお笑い番組ははじかれてしまう感じもあるので、世の中との接点をキープしておきながら、視聴者の皆さんが興味を持って楽しんでいいただける番組にしたいと思っています。ぜひ見ていただけたらうれしいです。