大事な“消しゴム”は大きさや細部まで徹底的にディスカッション
――これまでの放送の中で、特に原作を生かそうとしたシーンはありますか?
神田P:第1話で橋下さんが貸してくれた消しゴムを青木が落とし、井田に見られてしまうシーンは、かなりこだわって撮りました。まず準備の段階では、消しゴムの大きさについてディスカッションしましたね。映像としては大きな消しゴムに"イダくん(ハート)”と書いてあった方がわかりやすいのですが、あまりにも大きいと「橋下さん、うかつな人だな」と違和感が生まれますし、自然に落とすことも難しくて(笑)。何度もシミュレーションして、本番に臨みました。
――かなり入念に準備されたのですね。本番ではスムーズにできたのでしょうか?
神田P:何回かリハーサルを重ね、本番では渾身の消しゴム落としができました。あのシーンは道枝さんと目黒さんだけでなく、クラスメートもスタッフも「大事なシーンを撮るんだ」とドキドキして臨んだからこそ、うまくいった瞬間は、みんな表情には出さないながらも「よしっ!」という空気が流れました(笑)。
実際、あっくん役の鈴木仁さんも内心「うまくいった!」と喜びつつ、頑張って気づかないふりをして芝居を続けたとおっしゃっていました(笑)。監督の「いい感じに落ちたと思います」という言葉を聞いて、道枝さんと目黒さんもホッとした表情をしていました。
現代的なリアリティーと“エモい”演出で大人の視聴にも堪え得る作品に
――演出面でこだわっているところはどこですか?
神田P:草野(翔吾)監督も宝来(忠昭)監督も、コメディーシーンと心情を表すシーンのメリハリを大切にしています。また「ラブコメとは、これだ!」というような既視感のある演出ではなく、リアリティーがあり今っぽい“エモさ”を表現できるようにこだわりました。そのためには、「ここが笑うポイントです!」というようなガイド的な効果音などは、極力つけないようにしています。また、密度の高いストーリーを展開しながらも、余韻を持たせて感情が自由に動けるようにするなど、映像のテンポ感も大事にしています。可能な限り、視聴者の方々にそれぞれの感性でキュンとしたり、クスッと笑ったりしていただけたらいいな、と。
――“エモさ”やリアリティーを重視するようになった理由というのは?
神田P:原作に描かれている内容は高校生のラブコメですが、これは大人の方も共感できるお話だと思いました。ですので、1話の脚本を作る段階から“大人の視聴にも堪え得るラブストーリー”にすることを意識していました。脚本の黒岩(勉)さんも、全話を通して見たときにコメディー要素とリアリティーのバランスがちょうど良くなるように描いてくださって。実際、1話はコメディー色を薄めに作っています。ストーリー性が濃くて、そこからコメディー色を強めていく。5話の告白回も、かなりコメディーに寄せたパートがあるのですが、そのあとにグッと心情に寄ったシーンに持っていくというのは当初から狙って脚本を作っていました。
――Snow Manの「Secret Touch」となにわ男子の「初心LOVE(うぶらぶ)」が劇中で流れるタイミングも絶妙だと話題です。
神田P:実は脚本を作る段階から、どのタイミングで曲を流すかを、ある程度計算しているんです。本作に限らずラブストーリーでは、音楽が流れるタイミングが1秒ずれるだけで泣けるか、泣けないかが変わってしまうこともあるので、監督は脚本打ち合わせの段階から主題歌の入るタイミングを意識していましたし、ビジョンを持って撮影に臨んでいます。その結果、絶妙と言っていただけるタイミングになっているのかなと思います。
毎週土曜夜11:30-0:00
テレビ朝日系
脚本=黒岩勉
演出=草野翔吾、宝来忠昭
出演=道枝駿佑(なにわ男子)、目黒蓮(Snow Man)、福本莉子、鈴木仁、田辺誠一ほか