松坂大輔の引退セレモニーに、イチロー、妻夫木聡ら豪華ゲストが登場 「野球を勉強して、再び戻って来られるように努力します」
埼玉西武ライオンズが、本拠地のメットライフドームでファン感謝イベント「LIONS THANKS FESTA 2021」が12月4日に開催され、イベントの最後には、今シーズン限りで23年間の選手生活に幕を下ろした、松坂大輔投手の引退セレモニーが行われた。松坂世代の俳優・妻夫木聡が登場したほか、サプライズでイチローが登場した。
セレモニーの冒頭では、元横浜高校監督の渡辺元智氏、ソフトバンクの王貞治会長、巨人の原辰徳監督、「元祖昭和の怪物で、同じ西武のドラフト一位」のコメントが失笑を誘った江川卓氏などの労いのビデオメッセージが流れたあと、同じ“松坂世代”の俳優、妻夫木聡氏が登場。
「僕にとってヒーローであり夢であり、最大のライバルでした。引退を迎えることが、僕にとっても感慨深いものがある。あなたの努力を近くで見ていた僕にとっては、この日を迎えるということが正直とても悔しい。悔しい思いもいっぱいしたと思いますが、そんな姿を見せずに、自分や家族のため、そしてファンの皆さんのために最後まで戦い続けた松坂大輔を僕は誇りに思います。本当に23年間ありがとう」と語った妻夫木は松坂に花束を受け渡すと、がっちりと握手を交わした。
続けて登場したのは、1998年のドラフト会議で交渉権を引き当てた当時の指揮官、東尾修氏。自らの200勝のボールを手渡したことが西武入団の決め手になった、松坂の恩師だ。
10月19日の引退会見でも、松坂は「自分自身が200勝して、(東尾さんに)お返ししたかった」と無念さを語ったが、この日のセレモニーでもボールについて話題が及んだ。
「あなたが私に対して、約束が果たせていないものがありますよね?あのボールの件ですよ。だから、また新たな約束をしてほしいです。今度帰ってくる時は、ライオンズのユニホームしか着ちゃダメだぞ!『守ります』と言ってください」と、勢いよく詰め寄る東尾に対し、戸惑いながら苦笑いする松坂は、「こればっかりは、僕が『やりたい』と言っても、戻って来られるわけではないんですが…。またライオンズに声を掛けてもらえるように、これからももっと野球を勉強して、戻って来られるように努力します」と応えると、スタンドにいるファンの大きな拍手が鳴り響いた。
続けて「野球と一緒で物覚えが悪い。挨拶の場に立つと忘れちゃう」という松坂は、自身の心情を綴った文章に目を通しながら、ファンに向けて最後の挨拶に臨んだ。
「野球を始めた時から応援していただいている方、ライオンズに入団してから応援していただいている方、怪我をしてから応援してくれた方、たくさんの方に支えてもらいました。本当に長い間ありがとうございました。現役時代の原動力は、応援していただいている方に喜んでいただきたいという想いでした。『One for All』という言葉を胸に、僕は投げ続けてきました。もし少しでもファンの方が喜んでくれたり、勇気やパワーを贈ることができていたのなら、こんな姿になっても『まだまだ投げ続けたい』と思いながらやってきて本当によかった」と、ファンに向けたメッセージや自身のピッチングに込めた想いを語った。
続けて松坂は、「ここまで来るなかでたくさんの方にたくさんの不満や迷惑をかけてきたことも事実です。改めて申し訳ありませんでした」と、近年は故障に悩まされる日々が続き、満足なパフォーマンスが見せられなかったことに触れつつ、「こんな僕に投げる場所を与えてくれたライオンズ、ホークス、ドラゴンズ、レッドソックス、インディアンス、メッツ、そして、いつも僕の気持ちを奮い立たせてくれたファンのみなさん、感謝しています。ありがとうございます」と、再び日米の所属球団やファンに向けた感謝の気持ちを述べると、「小さい頃から投げること、打つことが大好きで、引退を決める直前までもっと投げたい、もっとみんなで勝ちたいと思っていた僕ですが、最後は投げられなくなるまで野球を続けてくることができて、本当に幸せでした」と、23年間の選手生活を振り返った。
「誰でもいつか辞める日が来ます。選手の時間は無限ではありません。悔いの残らないように、日々を過ごしてください」という松坂の言葉を噛み締めながら、引退挨拶を見つめる西武ナイン。チームの生え抜きで野手最年長の中村剛也、栗山巧らも、セレモニーを見守った。
松坂がグラウンドを一周してファンへの別れを告げ、セレモニーを終えようとしていると、突然イチロ―(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)のメッセージが大型ビジョンに映し出された。
「大輔、どんな言葉をかけていいのか、なかなか言葉が見つからないよ。僕にはこんなやり方しかできません。許せ、大輔」というコメントが流れると、一塁側からイチロー本人が花束を持ってサプライズで登場。スタジアムが騒然とするなか、幾多の名勝負を繰り広げてきた盟友から花束を渡された松坂の目には、涙が光っていた。
「ファンフェスタ」では、西武ライオンズのチームメートで同時期にメジャーリーグに挑戦した松井稼頭央ヘッドコーチとのトークショーも実現。「雰囲気から優しかった」という松井氏と初対面を果たしたテレビ番組での共演や、「松坂フィーバー」の想い出などが語られた。