面白いと思ったら、舞台でもっと奥深く知ってほしい
ところで児島氏はこのコロナ禍で、なお新たな挑戦を始めた。昨年4月から西新宿に「ナルゲキ」という劇場をオープンさせたのだ。このチャレンジにも、東京のお笑いライブシーンの一体感が関係している。
「以前は外部の劇場をお借りしてライブを開催していたのですが、コロナ禍でオンライン配信を始めたら毎日機材を別の劇場に移動させるのが厳しく、拠点を設けたいと思い始めました。ちょうど劇場側も借り手が減っていたタイミングだったそうで、ニーズが合致して年間契約ということになりました。あと、やっぱり劇場を持っていない事務所の芸人さんは出られるライブの本数が少ないので、それも増やしたくて。東京のライブシーンには事務所を超えた一体感があるから、彼らにホームと思ってもらえる劇場にできたらと思います」
ナルゲキは元々ピアノの発表会などを開催していた小ホールだが、そこにも狙いがある。
「お笑いライブってどうしても地下、アングラというイメージがあるんです。暗くて、パイプ椅子がぎゅうぎゅうに並んでいて。それを払拭できる劇場にしたかった。賞レースで売れてテレビに出るようになった芸人さんも、ライブに帰ってきやすい劇場にしたいです」
確かにテレビでお笑いを見る視聴者は多いが、お笑いライブに足を運んだことがある人はそれに比べて少ない。これはお笑いライブが「閉ざされたオタク文化」と思われているからだと児島氏は語る。
「テレビはやっぱり、わかりやすくテロップなどで見方を提示してくれているので。『〇〇さんオススメ芸人!』というような形でテレビで紹介されるのと、いきなり何もない舞台でよく知らない芸人さんを見るのとでは、同じコンビでも第一印象が全然違いますよね。でもせっかく面白いと思った芸人さんがいたら、舞台に立ってるところを見て、もっと奥深く知ってほしい。それこそ去年のM-1決勝に出た芸人さんも、まだ全然ライブで見られるので。お笑いライブに行くのが変わった趣味じゃなく、休日に映画を見る、本を読むといった趣味と同じような感覚になったらいいなと思います」
M-1グランプリ2022の台風の目となるか?児島氏オススメ芸人
最後に、児島氏がライブシーンで今注目しているコンビを3組紹介してもらった。
【カナメストーン】(マセキ芸能社)
今年のM-1でも決勝に行くんじゃないか?と思われていたコンビで、とにかくM-1優勝にかける思いが強い。淡々とボケる山口さんと、声のトーンが独特で癖になるツッコミの零士さん。この2人だからこそできるというネタの雰囲気は、ランジャタイさんとも通ずるところがあります。あとカナメストーンさんもランジャタイさんと同様、どんなに小さなライブでも全力で舞台に立ってくれる芸人さんですね。2人ともファッションが好きでおしゃれなので、売れたらそういうお仕事も向いてると思います。
【パンプキンポテトフライ】(ホリプロコム)
今注目の漫才師です。長髪の山名さんが、ひょうひょうとした顔つきにトリッキーな動きをつけたボケを繰り出して、ツッコミの谷さんはダンディーに渋めな感じでツッコむ。そこまでテンションの上がり下がりが激しいタイプの漫才ではないんですが、ボケの質の良さとツッコミのワードセンスで、2人のやりとりにお客さんが自然とノッてくる感じがあります。あと漫才師は舞台に登場したときの立ち姿の第一印象がとても大事だと思うので、そこも魅力的なコンビです。
【ヤーレンズ】(ケイダッシュステージ)
モグライダー、錦鯉、ランジャタイなどとずっと一緒にライブシーンで頑張ってきたコンビで、芸歴も長く、去年は身近な芸人さんがM-1で評価されていった中で、きっといちばん悔しかっただろうと思います。今まではひょうひょうとして、苦労をあんまり見せない彼らでしたが、2022年は「M-1決勝行きます」と既に宣言しているくらいの意気込みを持っています。芸風は自分たちの漫才を「ジャズ」と言っていたりして、おしゃれな感じで言葉遊びがうまい印象です。特に今20~30代くらいの方にはすごく刺さるワードセンスがあると思います。
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