Season1の主演を赤楚衛二が、Season2の主演を坂口健太郎が務める「WOWOWオリジナルドラマ ヒル」。他人に寄生して生きる"ヒル"と呼ばれる者たちと格差社会を描く社会派復讐サスペンスだ。
赤楚は殺人犯の父親をもちながら、見知らぬ男に身分を奪われ、殺人未遂罪で警察に追われるユウキ役を演じる。
今回、赤楚にインタビューを行い、演じる役柄や撮影の裏話、坂口健太郎とのエピソードなどを聞いた。
――作品の印象を教えてください。
「フィクションではあるけど、現実世界で起きてもおかしくない出来事の連鎖が描かれているなと思いました。ユウキは普通の生活を送りたいと思っているし、普通の人たちに対しての羨望が強いんですね。そんな中で身分を奪われてかわいそうではあるんですけど、ヒルたちと関わることで生きていかなきゃと実感したり、人とのつながりや愛情を感じていくんです。それをどう表現できるかどうかを意識して演じました」
――他人に寄生する不法滞在者のヒル。改めて考えると恐ろしい存在ですよね。
「かなりゾッとしましたね。現代社会でも実際にありえない話ではないじゃないですか。自分がいない間に、部屋に誰かがいるかもしれないし。鍵はちゃんとかけなきゃいけないなと思いましたし、作品の影響でシャンプーボトルも中身が見える透明なものにしました(笑)」
――ユウキという役はどう作っていきましたか?
「普通に生きたいという気持ちをどれだけリアルに表現できるかが重要になってくるなと思ったので、テレビやスマホも見なかったし、人とも連絡を取りませんでした。人との交流を遮断することで、友達同士が遊んでいる情報が入ってきたときに『いいな〜』と羨ましく思う気持ちを確認しました」
――現場の雰囲気はいかがでしたか?
「共演者の方々のキャラクターの噛み砕き方がそれぞれ違っていて。このシーンではどうすればいいのかを話し合っていました。自分の役のことだけではなくて相手のことを思う方々がたくさんいて、すごくありがたかったですね。自分もそういう人になりたいなと思いました」
――坂口健太郎さんとの共演はいかがでしたか。
「見下ろされている構図や、ナイフで頭を叩かれるのは坂口くんのアイデアなんです。それによって、ユウキが自分の未熟さや弱さを改めて感じるシーンでもあるので、すごいなと思いましたね。坂口くんは周りの人がお芝居をやりやすいような環境を作ってくれるんです。例えば、会話するだけでもシーンは成立するんだけど、不意に手を掴むことによって湧き出てくる感情やアクションを起こしてくれたり。自分のことだけじゃなく、全体のことを見てくれている視野の広さが改めて素敵だなと思いました」
――普段から交流はあるのですか?
「コロナ前は食事やお茶に連れていってもらいました。基本的に僕が坂口くんのボケを拾いきれずに、ボケが浮遊してしまうんですけど(笑)。あまり突っ込めないので、突っ込めるようになりたいです(笑)」
――ヒルは寄生ということですが、赤楚さんご自身は他人に依存や執着するタイプですか?
「ももともと執着がないんです。僕は好きだから、それならそれでいいと思っていて。向こうは僕のことをどう思っているんだろう?とかは気にしないですね。『俺たち、友達だよな』とかも言葉にすると重くなるじゃないですか。来るもの歓迎、去るもの追わずです。でも最近、実家のチワワのぽんたには執着してますね。膝の上で寝ていたり、車に驚いている姿の動画がかわいくてしかたないんです。親に写真や動画を催促しちゃってる自分が、違う性格になったみたいでなんだか不思議です(笑)」
――最後に、ご自身がこの作品から得たものはありますか?
「ここ数年、怒る芝居をする機会がなかったので、新鮮でした。この作品と役を通して、当たり前に日常が過ぎていくことがどれだけ幸せかを改めて実感することができました」
文=横前さやか 撮影=山田大輔
ヘアメイク=廣瀬瑠美 スタイリスト=壽村太一