TVerと日テレ無料(TADA)で配信中の番組「神回だけ見せます!」。テレビプロデューサー・佐久間宣行と伊集院光が、日本テレビのアーカイブセンターに眠る知られざる「神回」を発掘するという内容で、第1シーズンとして5本が配信されている。テレビ局の豊富な映像アーカイブを生かしたこの番組について、日本テレビ・ICTビジネス局の中西亮太さんと、プロデューサーを務めたコンテンツ制作局の越山理志さんに聞くと、「他とかぶらない面白さ」を突き詰め続けてきたテレビ局ならではの、コンテンツホルダーとしての強さが見えてきた。
佐久間宣行と伊集院光の「面白さを紐解く力」
「神回だけ見せます!」は今年5月に配信開始し、現在もすべて無料で視聴できる。紹介される番組は,#1「アナザースカイ」(出川哲郎がクロアチアを訪ねる)、#2「木曜スペシャル」(壮烈!車大騎馬戦)、#3「くりぃむしちゅーのたりらリラ〜ン」(ベタドラマ)、#4「全日本プロレス」(アブドーラ・ザ・ブッチャーVSザ・シーク)、#5「ブラウンさん」(ゲスト萩本欽一)と幅広い。佐久間と伊集院がオープニングトークで、その番組を見たくなる情報を簡単に紹介、その後ワイプでコメントしながら映像を鑑賞し、最後に感想をトークするというシンプルな構成だ。
企画経緯としては、日本テレビ役員で「行列のできる相談所」などの総合演出を手掛ける髙橋利之さんが元々の企画を発案。TVerなど配信事業を担当するICTビジネス局とコンテンツ制作局の連携で実現に至った。
越山さんは普段「沸騰ワード10」などの番組を手掛けるプロデューサー。今回配信限定の番組を作る上では、普段の放送と違い「ちょっと尖ったコンテンツでもいいのかな、ということを頭の片隅においていました」と語る。
「扱う『神回』自体は万人に受けるものでなくてもよくて、それをどう多くの人に面白がって見てもらうかだと考えました。そのために佐久間さんと伊集院さんを起用して、伝わりやすいように面白さを紐解いてもらう形にしています」(越山さん)
佐久間と伊集院をキャスティングした理由はこの「紐解く力」にある。
「お2人ともクリエイターとして活躍されている方。佐久間さんはもちろんですが、伊集院さんも『伊集院光のばんぐみ』(伊集院が企画・構成・演出を担当)をやられていたり、ラジオパーソナリティーとして話す際の構成力だったりとクリエイター気質なので、作り手側の思いを解説するコメントをしていただけると思いました」(越山さん)
実際、番組を視聴すると、佐久間と伊集院による制作側の事情も踏まえたコメントが、元の動画を更に面白くしていると感じる。映像を見た後の感想トークについては完全にフリーとのことで、長年テレビの世界で生きてきた2人の圧倒的な経験値が光る。越山さんも「第1回で『アナザースカイ』を見た後、佐久間さんから番組の構成に関する解説が出てきたときに、まさに僕らの思っていることを言葉にしてくれていると感じました」と感嘆。取り上げる映像にはかなり古いものもあるが、こういったメタ的なクリエイター視点が入ることで「単にアーカイブ映像を見るというだけではなく、昔のテレビが今のテレビにもつながっているという新しい発見があり、テレビ論が深まる」と語る。確かに、#5で萩本欽一とコント55号の分析から、モグライダー・芝の話につながるくだりなどは思わず頷いてしまう。