あえて「デブ」というワードを使っている
――女性ファンの割合が高く、お二人の活動を通して体形に悩む方が励まされているようなこともあるようですが、お二人自身はアイドル活動にどういった意味を見出していますか?
大橋:私たちはあえて「デブ」というワードを使っていますが、やっぱり世の中では「デブって言わないでぽっちゃりって言ってよ」と言われるように、「デブ」にいい印象はないと思うんです。でも、デブを私たちは恥ずかしいと思っていなくて、「デブだけど別に良くない?」というスタンスなんです。デブでもおしゃれだってできるし、アイドルにだってなれるし、TIFという夢もかなえることができた。だから体形なんて関係なく、デブでもポジティブに人生を歩んでいけるんだよ、ということ伝えていきたいなと思っています。
例えば、学校なんかでデブと言われて落ち込んでいる子とかに「デブ」ってすごくいいワードなんだよと言えるくらいの世の中になればすごくいいなって。「それで何が悪いの」というくらいの感覚で、ポジティブに人生を歩んでくれる人がたくさん増えたらなと思います。
多田:私は3歳からデブだったのでからかわれることも多くて、「デブ=ダメ」ということを小さい頃から肌で感じていました。傷付くこともたくさんあったし、自分の体形をポジティブに捉えられるようになるまではすごくネガティブに生きてきました。体重も言えなかったし、自分のこともデブとも言えなくて。だけど、「デブでも良くない?」と思えるようになってからは、今までの人生すごく損していたなと感じたんです。もっと楽しく生きてくればよかったなって。今はおデブアイドルとして「デブってかわいいじゃん」というふうに世の中を変えていきたいですね。
ポジティブに変換できたきっかけ
――傷付くこともあったということですが、いつ頃からデブという言葉をポジティブに受け止められるようになったんでしょうか?
多田:コスプレでメイド服ってあるじゃないですか。私は大人になるまでコスプレをしたことがなかったんですが、ある時「死ぬまでにメイド服を着てみたいな」と思った瞬間があったんです。それで「メイド ぽっちゃり」で検索したら、月に1回メイド喫茶を開催しているぽっちゃりさんたちがいて。それに応募したことをきっかけに、「ぽっちゃりを好きな人もいるんだ」と気付くことができて、すごく変われたんですよね。
その時の私の体重は70キロくらいで、自分のことはデブだし、ダメだと思っていたんですが、そこで人気のある方は100キロ超えなんですよ。「こんな世界もあるんだ」と思いましたね。自分が今までネガティブに生きてきたことがすごくもったいないなって。もっと明るく楽しく、自分の体形を受け入れて生きていければ、もっと楽しかったのにって。
それからは、もともとアイドルが好きだったこともあって「ステージに立ってみたい」という気持ちから、今までいなかったであろう体形を生かしたおデブアイドルとして、誰も突き進んでいない道を突き進んで世の中の誰かのプラスになるようなことができたらいいなと思うようになりました。
――大橋さんもネガティブな時期があったんですか?
大橋:私は体重が55キロと今の半分以下だった時期があるんですが、その当時でも自分自身のことをデブだと思っていました。周りにも「痩せなさい」と言われていたのですごくネガティブに思っていたんですが、今自分が専属モデルをしている「la farfa(ラ・ファーファ)」(文友舎)というぽっちゃり女子のためのファッション誌をたまたま見つけて。ぽっちゃりしていてもみんな水着で笑顔でいて、自分が今まで悩んでいたのは何だったんだろうと思いました。
それまではおしゃれを楽しむこともできなかったんですが、「ラ・ファーファ」と出会ってからは、「自分もおしゃれをして楽しんでいきたいな」と思って、ポジティブになれるようになりました。以前は拒食症になるくらいにご飯も食べていなかったんですよ。それくらい思い悩んでいましたね。