蛭子さんが亡き妻と語り涙する「マスクマン!」
「マスクマン!」(2002年4月~9月放送)は、テリー伊藤と中嶋知子が司会の深夜バラエティ。その中のコーナー「異人たちとの夏」が、「神回」として配信されている。
「異人たちとの夏」は、毎回1人のゲストをスタジオに呼び、モニタに登場するCGキャラクターと会話をさせる。CGになって登場するのは、過去の自分や、亡くなった家族なのだ。
「神回」として配信された蛭子能収回では、最初に「過去の自分」が登場した。漫画家デビューしたころの24歳の蛭子さんが、モニタの中から「なんで最近漫画描いてないの?」「手抜きしてるって聞いたぞ!」と未来の自分を責め立てる。しどろもどろで自分に言い訳する蛭子さん。
そこに「おぬし」と呼びかけながら、もうひとつのモニタが登場する。映し出されたのは、1年前に亡くなった妻だった。
ここからスタジオは、蛭子さんと妻の“2人きり”になる。30年前、六畳一間に2人で住んでいたころを一緒に振り返りながら、2人は思い出のカレーとケーキを口にする。その会話はとても自然だ。「約束よ?絶対、一生漫画はやめない」「うん、やめないよ。ずっと描くから」。空中で指切りげんまん。目に涙を浮かべて「もっと医療のこと調べておけばよかったね」と漏らす蛭子さんに、「おぬしのせいじゃないよ」と語りかける妻。
こんな蛭子さんの顔を見たことない……というか、こんなコーナーが成立するのが奇跡でしかない。番組は事前にゲストのエピソードを徹底的にリサーチし、それをCGの声の人が読み込み、現場で即興でやりとりをしたそう。でも、エピソードの出し入れを間違えると、途端に興ざめしてしまうだろう。話が噛み合わなくなることだって、十分に考えられる。
そんな高度なやり取りをしていた声の主は、一体誰なのか。「マスクマン!」本編ではまったく触れないのだが、のちに水道橋博士が著書の中で、浅草キッドが声を担当していたことを明かしている。だが、この回は浅草キッドの担当ではない。
「神回だけ見せます!」では当時の裏話として、その正体を明かしている。佐久間&伊集院も「すげー!」と驚愕する、衝撃のラストだった。