「オン」という名の武装
企画スタート直後のオードリーの「オン」は手探りだった。ぎこちなく「どう最近?」話しかけたり、相方の衣装を着てみたり、メイク室でふざけあったり、積極的に「オン」を作りにいく。日向坂46より前にスタジオに入り、スタッフを褒めて現場を温め、カメラが止まっても日向坂46のメンバーたちに話しかけて逆に「怖い」と気味悪がられてしまう。
1本目の収録を終えた2人は、すっかり疲労困憊していた。慣れない「オン」を身にまとい、隙が生まれないよう目を光らせ、ずっと武装をしていたのだ。それは疲れてしまうだろう。
ただ、長時間の収録は、この武装を徐々に脱がせていった。ヘトヘトで廊下を歩く若林は、自然と春日に寄りかかる。普段「オン」を自然体でやっている人のことを思いだし、「本来こうなのかもな。大人の仕事って。若い人にリラックスしてもらって(若林)」 「与える側になったってことだな春日は。与えられる側から(春日)」と、自らの仕事を振り返る。
メイク中ずっと無言だったり、収録後すぐに帰ったりという「オフ」の状態も、相手に過度に干渉させないという “武装”のひとつではあっただろう。一方で過度の「オン」も相手を引かせてしまう。「オン」過ぎも「オフ」過ぎでもない、ちょうどいい「オン」は、2人に考える時間を与えない疲労困憊の先にあった。