お客さんとの絆は決して淡泊なものではなく、もしかしたら家族でも友達でも成し得ないもの
――これまでの2枚のアルバムと同様に、東山さん自身が作詞・作曲を担当している楽曲がありますね。今回のアルバムに収録された“OVER!!”についても聞きたいです。
東山:2ndアルバムの表題曲“群青インフィニティ”が、ライブを経るごとに盛り上がりソングになっていて、ロック系の曲はあまり作曲したことがなかったので、そろそろそういう曲も作ってみようかな、という思いつきから作り始めました。
“群青インフィニティ”の続きの曲、今なら書ける気がする!みたいな(笑)。 “群青インフィニティ”のあとに歌う意義がある曲を作ろうと思い作っていったのですが、“OVER!!”が世に出て、みなさんに受け取っていただけて、自分が思っていた以上にメッセージをしっかり受け止めてもらえてる印象があるので、ほっと一安心しているところです。これから先もライブで聴きたいと待ち望んでいただける曲に育っていってくれたらいいなと思います。
――“OVER!!”は、“群青インフィニティ”と同じく歌詞の一人称、主語が《僕ら》で、そこも印象的でした。受け手が、楽曲の主人公の一部になっていますね。
東山:そうですね。応援ソングなので、これを自分自身の歌として受け取ってもらえたら、という思いがあります。かつ、《僕》とか《きみ》じゃなくて、一緒にいる頼もしさもあるといいんじゃないかなっていうので、《僕ら》っていうふうに歌っています。
――《僕ら》の中には当然、ライブに来てくれる人、曲を聴いてくれる人の存在が含まれているわけですが、歌手活動5周年を駆け抜けた東山さんにとって彼らはどんな存在なんでしょう。
東山:ズバッと言い表すのは難しいですね。家族とも友達とも違うと、わたしは思っていて。アーティストさんの中には「わたしたちは家族だよ」「友達みたいだね」って言う方もいらっしゃいますし、その現場によってそれぞれの関係性があるのが素敵だと思うんですけど、わたしにとってお客さんは、やっぱり「お客さん」なんですよね。
それは決して突き放しているのではなくて、お客さんと演者という関係性ってすごくいいものだなあって感じているからなんです。私がダメなときもじっと見守りつつ、逆にこだわったらこだわった分だけみんがそれを見つけてくれるし。いろいろな思い出が重なっていって、信頼が深まっていくんだと思うんです。
そこにある絆は決して淡泊なものではなく、もしかしたら家族でも友達でも成し得ないものがあると思いますし、それはとても素敵な関係性だと感じています。
みんなが努力の跡を見つけてくれるからわたしは頑張れるし、いつでも順風満帆なわけではないですないけど、そんなわたしが頑張る姿を見て、みんなもその姿を持ち帰って、自分も頑張ろうって思ってくれる、勇気にしてくれるんだったら、それもいい関係性だなって思います。おひとりおひとりのことはわからないけれども、とても他人とは思えない存在だと感じています。
――ツアーファイナルも含めて、今後の歌手活動で音楽をどのように届けていきたいですか。
東山:みんなに届けたいことは、「楽しい!」の気持ちだけです。そして、いろいろな想いをそれぞれで受け取ってもらえたらいいな、と思います。今回のライブも、華やかできらびやかで、ワクワクが詰まったハッピーなステージになっていますので、それを見て「楽しいもの見たなあ」って思って、ホクホクして帰ってもらえたら、わたしも大満足です。
このステージに向かうためにいろいろな準備をしてきて、テーマパークをステージの上にドンッと持ってきた感じがしていますし、声優・歌手のライブではありますが、そこにとどまらないショーになってるんじゃないかな?と、勝手ながら思っております。ぜひこのテーマパークのみんなで遊びにきていただけたら嬉しいです!
取材・文=清水大輔
●東山奈央(とうやま・なお)
2010年に声優デビュー。代表作に、『神のみぞ知るセカイ』(中川かのん役)、『はたらく魔王さま!!』(佐々木千穂役)、『彼女、お借りします』(更科瑠夏役)、『神クズ☆アイドル』(最上アサヒ役)など。アニメ作品から派生したユニット、Rhodanthe*やワルキューレにも参加し、数多くのステージに立つ。2017年2月1日、『Chain the World / True Destiny』で自身名義の音楽活動をスタートし、2018年2月に日本武道館で1stライブを開催。2022年2月1日に、歌手活動5周年を迎えた。9月28日に、3年半ぶりとなる3rdフルアルバム『Welcome to MY WONDERLAND』をリリース。
http://toyamanao.com/