1人で美術まで作る長田、野田に丸投げする春日
芸人たちが組み合わせをシャッフルさせてネタを披露する企画は、「ドリームマッチ」(TBS系)をはじめ他の番組でも行われてきた。だが「ドラフトコント」は、「5人でコントを作る」ことに特徴がある。
コンビやトリオで作るコントとは勝手が違い、5人全員を活かすのは難しい。ましてや“異分子”が入り込むならなおさらだ。さらに全員が売れっ子なので、そろって稽古する時間も限られている。この難題を、5つのチームそれぞれが違う手法で解決しているのが興味深かった。
チーム長田は、長田が脚本や美術イメージなどを一人で手掛け、ドラフトから2週間で完成形を作ってしまった。内容は「アジアのどっかにありそうなバラエティ番組」。登場人物全員がどこかの国のデタラメな言語を話し、なんだかよく分からないゲームに挑戦し、最後は歌でお別れする。演者には「セリフがないとこんなに緊張しないんだなって(岡野陽一)」という利点がある一方、手間がかかったのが美術セット。全チームの美術予算の半分を使い切った、テレビコントならではの豪華かつシュールな世界だった。
一方、セットは商店街の背景だけだったのがチーム春日。というか、春日は野田クリスタルにネタ作りを丸投げし、稽古も仕事で欠席したため、実質「チーム野田」である。できたコントは「商店街ロケ」。野田がADに扮し、他の4人はカンペ通りに「トゥース!」「はぁい!」「どんだけ~」「いっちゃってる!」と自身のギャグを叫ぶだけ。カオスな状況に笑いが高まってきた最後、野田は「ギャグ、それは芸人を縛り付ける呪いかもしれません」と語り、「世にも奇妙な物語」で落とす。
野田以外の4人はカンペを見て叫ぶのでセリフを覚えなくていいし、野田自身は「お前らのロケってこういうことだぞ」「説教」とギャグ芸人たちに思いの丈をぶつけた。逆境から生まれた、この番組でしか見られないコントに仕上がっていた。