「ホンマでっか!?TV」「アウト×デラックス」「さんまのお笑い向上委員会」と、フジテレビの人気番組の演出を多数手掛けている鈴木善貴氏は、自他ともに認める大のテレビバラエティー好き。今の仕事はまさに“天職”と言っても過言ではなさそうだ。明石家さんまをはじめとする笑いの猛者たちと“演者×制作者”の真剣勝負を繰り広げながら、日々オリジナリティーあふれる番組を世に送り出している鈴木氏に、フジテレビ入社当時に味わったプロの洗礼や、テレビマン人生の転機となった出会い、また番組を作る際の心構えなどを語ってもらった。
番組作りには“点”ではなく“線”の企画力が必要なんだと
――鈴木さんがテレビマンとして最初に携わった番組は何ですか?
「最初の番組は『トリビアの泉』('02~'06年フジ系)です。僕が入社したタイミングで、ゴールデンタイムに進出することになって、タモリさんのレギュラー出演も決まって。そこにADとして参加しました。僕は岐阜出身なので、関東ローカルの深夜番組だった『トリビア』のことは実はよく知らなくて。ネタのリサーチがめちゃくちゃ大変だというウワサだけは聞いていて、実際めちゃくちゃ大変でした(笑)。体力には自信があったんで、徹夜続きで寝られないとかいうことには抵抗がなかったんですけど、もともと『笑う犬』シリーズ('98~'03年フジ系)が大好きで、コント番組が作りたくてフジテレビに入ったので、そういう意味での戸惑いはあったかもしれませんね。『なんかジャンルが違うなぁ、見たことない番組だし』みたいな(笑)」
――初めて参加したバラエティー番組の現場はいかがでしたか?
「夜から朝までの会議が週3回。その合間に、ネタのリサーチやVTRの仕込みがあって、想像以上に忙しかったです。体力には自信があると言いながら、初めての収録のとき、寝ちゃいましたからね」
――スタジオで、ですか!?
「はい、立ったまま(笑)。それで収録が途中で止まっちゃって、皆さんに多大なるご迷惑をお掛けしてしまいました。これで僕のバラエティー人生は終わったな、クビだなって思ったんですけど、幸い、上司も先輩も寛容な方たちばかりで、奇跡的におとがめなしで事なきを得たんですけど。とにかく大変な毎日だったけど、当時一緒に仕事をした人たちには、“戦友”みたいな意識がいまだにありますね。とても良い経験になりました」
――忙しかったこと以外で印象に残っていることは?
「さっきもお話しした通り、僕は昔からコント番組が好きで、自分はけっこう笑いのセンスがあると思い込んでたんですね(笑)。学生時代の友達も、笑いのセンスが良いなって奴が多かったし。だから入社した当時も、自分で面白いと思う企画を100本ぐらい温めてたんですよ。だけど、先輩たちから『それは全部、番組の中のワンコーナーだ』と言われて。レギュラー番組の企画というのは、毎週どう展開していくかというところまで考えないといけないんだと。その点、僕のアイデアは瞬発力だけの“点”の企画。番組作りには“線”の企画力が必要なんだということを教わりました。しょせんは学生レベルで、プロの仕事ではなかったということですよね」