かっこ悪い自分を見せられる“明石家さんまの笑い”ってすごくかっこいいと思います
――これまでのキャリアの中で“転機”となった番組は?
「『お台場明石城』('04~'06年)という深夜番組で、初めてチーフADを務めたときに、明石家さんまさんとご一緒したんです。フジテレビのディレクター陣がさんまさんに新しい企画をプレゼンするという番組なんですけど、僕は生意気にも、ある先輩の提案した企画が面白いと思えず、収録中に首をかしげちゃったんですね。そしたら、それをさんまさんがしっかり見ていて(笑)。そこから、お前も何か企画を出してみろということになり、以来、毎週のように僕の拙いプレゼンをさんまさんが面白おかしくイジってくださった。そのご縁が、今の『ホンマでっか!?TV』や『お笑い向上委員会』に繋がっていったわけで、その意味では『明石城』は大きな転機だと思いますね」
――鈴木さんが明石家さんまさんから学んだことは?
「さんまさんは、どんなときもブレない。ボキャブラリーも身のこなしも若々しいし、ツッコミもボケも自由自在。時々、自分と同い年なんじゃないかって錯覚しそうになります(笑)。それと、責任感が強い方なんですよね。ご自分で『やる』とおっしゃったことは必ず最後までやり通す。昔、『明石城』で僕がプレゼンした企画が発展して、『ゼウスの目薬』('07年)という深夜の特番を作ることになったときも、さんまさんがMCを快く引き受けてくださって。予算がないから申し訳ないなと思ったんですけど、さんまさんって、お金ではなく気持ちで動く方なんですよ。言うなれば、“人生の偏差値”がものすごく高い方だと思います。でも、その一方で、子供みたいに純粋で無邪気なところも持ち合わせていらっしゃる。かっこ悪い自分を見せられる器の大きさも含めて、“明石家さんまの笑い”ってすごくかっこいいと思います」
――「さんまのお笑い向上委員会」では、どんな演出を心掛けているのでしょうか?
「『お笑い向上委員会』って、最初は芸人さんたちときちんと打ち合わせをしてたんですよ。でも、いざ本番となると、誰ひとりとしてその通りに動かない(笑)。今でも一応、事前の打ち合わせはあるんですが、『でも、この通りに行かないよね?』が合言葉みたいになってます(笑)。僕は演出担当として、ずっとスタジオのフロアにいるんですが、今携わっている番組の中で一番、現場にいて楽しい番組ですね」
――でもその分、編集が大変そうですね(笑)。
「確かに収録中は、ゲラゲラ笑いながら、『これは編集が大変だぞ…』って思うことはよくありますね(笑)。この番組の編集方針としては、“爆笑”を捨てて“大爆笑”のシーンを残す、というのがまずひとつあって。とはいえ、ただ大爆笑をつなげるだけではダメなので、全体の辻褄を合わせるというか、番組1本分の流れを作ることも意識しています。
ちなみに、さんまさんって編集には一切口を出さないんですよ。他の番組でもそうですけど、編集は全部スタッフに任せてくださるんです。さんまさんは基本的に、スタッフに対しては『お互いにプロだ』というスタンスなんですね。ですから、『お笑い向上委員会』も『ホンマでっか!?TV』も、そんなさんまさんのプロ意識に応えるべく、とことん本気で、妥協せずに番組作りに臨んでいます」