若くして伊東四朗主演のコメディー番組に携わり、プロデューサーとして松本人志の9年ぶりのコント番組を立ち上げたかと思いきや、無名の若手漫才師たちが参加する“芸人リアリティー番組”を企画するなど、新たなお笑い番組のあり方を模索し続ける松井修平。公共放送であるNHKで、“笑い”に一心不乱に取り組む彼の真意はどこにあるのか――?
“今までになかった番組”を考え続ける日々を送っています
――ネタ番組を中心としながら、クイズ、ドキュメンタリー、ドラマと多岐にわたるジャンルの番組を手掛けている松井さんが、番組を作る上で最も大切にされていることは何でしょうか。
「ズバリ、“今までになかった番組”を作ること。斬新であることに重きを置いています。もちろん、“面白い番組”であることは大前提ですけど。テレビの草創期とは違って、今や番組のあらゆるパターンはほぼ出尽くしているので、何か新しいことはないかと考え続ける日々を送っています」
――そうした考え方から、「爆笑ファクトリーハウス 笑けずり」('15年NHK BSプレミアム)という番組が生まれたんでしょうか。“荒けずり”な若手漫才コンビ9組が毎週新ネタを披露する合宿を行い、最も面白くないとの評価を下されたコンビが強制的に帰されてしまう。一組ずつ“けずられ”ていく、という展開が新鮮でした。
「ある日、新企画の会議で、『リアリティー番組の芸人版』というアイデアが突然出てきて。僕も『テラスハウス』(フジ系)をはじめ、リアリティー番組は好きでよく見ていたんですね。ただ、その中には…特に海外のものは、ストーリーとは関係ない指令とか、ゲームみたいな課題があったりして、ちょっと余計な演出をしている番組も多いな、と感じていて」
――確かに、脱落者を決めるために、参加者同士を無理やり険悪になるよう仕向ける番組もありますね(笑)。
「ところが、参加するのが漫才コンビとなれば、“面白さ”を競い合うわけですよね。お互いに切磋琢磨したり、ケンカしたり、というリアリティー番組ならではのドキュメント性に加えて、回を追うごとにネタが面白くなっていく、芸人の成長過程も見せることができる。つまり、ネタ番組でありながら、ネタの見せ方の工夫の一つとしてリアリティー番組というフォーマットを取り入れたわけです。コレは絶対に新しい形の番組になるぞと確信しましたね」
――すぐにそこまで具体的な展開が想定できたんですか?
「僕は『オンバト+』('10~'14年NHK総合)のチーフプロデューサーだったこともあって、若手の芸人さんと接する機会が多いんです。彼らを見ていると、ネタだけじゃなく、私生活も含めて本人そのものも面白いんだ、というのは常々実感していたことで(笑)。そんな要素もひっくるめて、リアリティー番組という形にすれば絶対いけるぞ、とは思いましたね」