羊宮さんの声は一回聴くと忘れない(森川)
——最後にこんな機会ですから、お互いに何か聞いてみたいことはありますか。
【羊宮】オーディションを受けるにあたって、事前に自分の声を録音してみることはありますか? 年齢感とか声色とか、自分のイメージしている声になるまで、音源に録って何度も確認したり……。また、感情を第一優先にするために何も録らずに挑みますか。
【森川】なるほど。僕、録音したことないな〜。
【羊宮】一回もですか?
【森川】うん。37年目だけど、一回もないね。もちろん、自分で出している声を自分の耳では確認するけど、それはあんまりそれは気にしてない。それよりも、自分が受けるキャラクターのアイデンティティ、性格や生き様、目的を自分の中に落とし込んで、納得するまで、キャラを作る方をやるかな。
【羊宮】私もそうなりたいです。自分の耳ではまだまだ判断できないので、本当に自分が感じているお芝居ができているのかなと不安になってしまいます。
【森川】録音すると安心するの?
【羊宮】例えば、自分で「幼い」でやったとして、「もっと幼くして」と言われたときに、テーマは一緒だけど、違う観点があるって感じて。そこで、今の私の「幼い」はどういう「幼い」だったんだろうかという疑問が生まれちゃうんですよね。声色で、もっと幼くすることはできても、もっと幼くした意図がその場で作ることができない。幼くする意図が明確に作れたほうが納得してお芝居できるのかなと思いました。
【森川】わかるわかる。僕はあんまり声色とかは好きじゃなくて。技術的なところよりは、気持ちのほうで押していくタイプですね。そっちで説得力を持たせたほうがいいかなって思いますけど、それは人それぞれのやり方があるからね。
——森川さんからは羊宮さんに聞きたいことはありますか?
【森川】一度見たら忘れない、素敵な名前だし、イメージもピッタリだなと思います。あと、急激に売れっ子になって素晴らしいですね。『アルスの巨獣』で共演できてうれしいです。
【羊宮】ありがとうございます!
【森川】あとね、声質にわざとじゃない儚さがあって。長年やっているとあざとくなっちゃうんですよね(笑)。「あ、こういうのが欲しいんですよね」って。技術的なものが身に付いてきちゃうのがイヤなんですけど、彼女を見ていると、やっぱり自然にやれるものを持ってる。これが彼女の最大の武器なんだろうなって思います。
【羊宮】夢のようです。
【森川】本当に羨ましい。僕は新人の頃、どうやって覚えてもらおうと思っていたから。「どこにでもある声だからどうしよう」って、ずっと思っていて。羊宮さんの声は一回聴くと忘れない。これはもう持って生まれたものだから素晴らしいなって思うので、喉を大切にしてください。あとで、僕のアメを差し上げます。
【羊宮】(笑)ありがとうございます!
(取材・文/永堀アツオ)
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発売日: 2023/05/31