平均年収90万円…茶葉農家のシビアな現実を変えたい 25歳の茶道家が広げるお茶の世界<最強の時間割>
平均年収90万円……茶葉農家のシビアな現実
こうしたカジュアルなお茶会を通して、岩本が多くの人にお茶の楽しさを伝えているのはなぜなのか。それは、お茶業界が置かれたシビアな現実を変えるためだった。
現在、茶葉農家の平均年収は90万円ほどと言われている。生産量も右肩下がり、お茶の単価も、生産人口も大幅下落する中で岩本は自分で会社を起こし、本格的にお茶業界に参入した。そこには、「大切なものが残されないのはおかしい」という思いがあったという。
会社を作る際には方々に頭を下げ、資金をかき集めた。静岡の山奥に工場を所有している岩本だが、その投資額はなんと1億8000万。しかし、長期で物事を考え、お金を託している人がいるのであれば、損得を考えずに挑戦しようと心に決めた。
資金集めの際に岩本が大事にしていたのは、自分のポジショニングだという。茶文化のブランディングによって、お茶の単価を上げるためには、文化と産業の両方の目線に立つ人間が必要だった。岩本は、そのポジションに自ら就いたのである。
そんな岩本が代表を務める株式会社TeaRoomは創業から5年間、売上高が毎年300%成長を遂げている。これからは文化の価値を高め、お茶の単価をさらに上げていくこと、ひいては、伝統工芸や茶室に関連する産業全体の底上げに取り組んでいくという。
岩本が考えるかっこいい大人とは、“公益性”のある大人。自分のためじゃなく、社会のため、未来のために何ができるか。「常に公益的に物事を見ながら考えていきたい」と岩本は最後に明かした。
SMR(SME)(D)
発売日: 2022/10/19