俳優・窪田正孝が、2月14日に都内で開催された「第77回毎日映画コンクール 表彰式」に登壇し、映画「ある男」で男優助演賞を受賞した。
撮影の1年半後に監督の演出の意図を知った
窪田は「伝統的な賞を頂けて心からうれしく感じております。このような場に立つことができて、人生ですごく幸せな瞬間に立ち会えているなと思います」と受賞の喜びのコメント。
そして、演じる上で気を付けたについて「役者は役を情報で埋めすぎてしまうんですけど、敢えてそうせず、グレーゾーンを保ったまま伏線とか考えないようにして、引き算のようにお芝居することを意識しました」と語る。
石川慶監督から受けた演出については、「監督は言葉では演出してくれなかったことが印象に残っています」と答え、「何度も何度もテイクを重ねていって、役というよりも、役者の中身の部分をフォーカスしたかったみたいなんです。その時は説明してくれなかったんですけど、公開が近づくにあたって取材で対談させてもらった時に、1年半越しにその心境を聞いたので『そう思っていたんだ!』って感じでした」と、監督の意図を後で知ったと明かした。
「俳優はどこか一方通行な仕事でもあると思う」
授賞式終了後、囲み取材に応じた窪田。「大好きな映画に携われるだけでも役者冥利に尽きるんですけど、スタッフさんやキャストの皆さんと一緒に作り上げたもので評価を頂いて、受賞まで至るというのは光栄なことですし、ここからまた一つ、これを励みに頑張りたいなと思います」と、改めて受賞の喜びの気持ちを伝えた。
そして、「どこか一方通行な仕事でもあると思うんですよね。作品ができて公開されれば、自分たちから離れてお客様の物になるので。ずっと映画に片思いの気持ちだったので、反応が返ってくるのはうれしいです」とホッとした表情を見せた。
最後は、今後目指すところについて「20代のころはガムシャラで、アウトプットすることが精いっぱいでした。そのおかげで今があると思うんですけど、30代に突入して、もっと私生活でインプットの時間を増やしていって、逆にお芝居の方は足していくのではなく引いていく感じで、もっと人間そのものを描けていけるように取り組んでいきたいです」と意気込みを語って締め括った。
「第77回毎日映画コンクール」受賞結果
日本映画大賞:「ケイコ 目を澄ませて」(三宅唱監督)
日本映画優秀賞:「夜明けまでバス停で」(高橋伴明監督)
外国映画ベストワン賞:「ベルファスト」(ケネス・ブラナー監督 ※代理登壇:宇都宮誠樹)
男優主演賞:沢田研二「土を喰らう十二カ月」(代理登壇:吉田憲一)
女優主演賞:岸井ゆきの「ケイコ 目を澄ませて」
男優助演賞:窪田正孝「ある男」
女優助演賞:伊東蒼「さがす」
スポニチグランプリ新人賞(男性):番家一路「サバカン SABAKAN」
スポニチグランプル新人賞(女性):嵐莉菜「マイスモールランド」
監督賞:三宅唱「ケイコ 目を澄ませて」
脚本賞:早川千絵「PLAN75」
撮影賞:月永雄太「ケイコ 目を澄ませて」(代理登壇:福嶋更一郎)
美術賞:今村力、新田隆之「死刑にいたる病」
音楽賞:青葉市子「こちらあみ子」
録音賞:川井崇満「ケイコ 目を澄ませて」
アニメーション映画賞:「高野交差点」(伊藤瑞希監督)
大藤信郎賞:「犬王」(湯浅政明監督)
ドキュメンタリー映画賞:「スープとイデオロギー」(ヤン・ヨンヒ監督)
TSUTAYA DISCAS映画ファン賞・日本映画部門:「チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~」(風間太樹監督)
TSUTAYA DISCAS映画ファン賞・外国映画部門:「トップガン マーベリック」(ジョセフ・コシンスキー監督)
田中絹代賞:寺島しのぶ
特別賞:中島貞夫(映画監督)
◆取材・文=田中隆信