コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、周囲から少し浮いている女性とその親友の関係性を描いた漫画『フローティング・夕子』をピックアップ。
作者である宮子玲子さんが4月8日にTwitterに投稿したところ、1.3万以上の「いいね」が寄せられ反響を呼んだ。この記事では、宮子玲子さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。
人の心がわからない親友にイラッ…友情においての気持ちの揺れをリアルに描く
大学生の若葉と夕子は、“小説を書いている”という共通点から仲良くなった親友同士。だが、夕子に限ってはその話し方と振る舞いが特徴的で、周りから少し浮いているような存在だった。
ある日、夕子からランチに誘われ学食へとやってきた若葉は、恋人・枝野といる夕子を見かけハッとする。枝野は実は若葉の元彼であり、夕子もそれを知っていながら交際を始めた過去があった。立ち尽くす若葉に、気まずい空気を察して去っていく枝野。そんな二人の様子を見て初めて、夕子は自身の配慮のなさに気づく。
若葉は、夕子の“人の心がわからない”失礼な言動にたびたび苛立ちを感じていた。いつも正しくて真面目な姿勢や文学の才能は尊敬しつつも、元彼の一件でやっぱり心が傷ついたと感じた若葉は「夕子と距離を置きたい」と考えるようになる。
後日、夕子から「小説の参考にしたいから一度行ってみたい」と誘われたパンケーキのお店で、自分の感情を正直に伝える若葉。しかし、その言葉を遮って夕子は「フラれた立場の気持ちってすっごく気になってたの」「すっごく参考になるわ!!」と嬉しそうにペンを取る。その態度にキレた若葉は思わず夕子にパンケーキを投げつけて…。
友情においての「好きだけどここだけは許せない」「失礼だけどやっぱり憎めない」という気持ちの揺れをリアルに描いた本作。Twitter上では「いい漫画だな」「この二人の友情、良い」「爽やかで愛らしい」「絵柄も素敵」「なんだかんだ言って一緒に喜んでくれる若葉本当に尊い」など反響のコメントが寄せられ、話題を集めている。
人間関係における実体験や感情を漫画に 作者・宮子玲子さんが語る創作の背景とこだわり
――『フローティング・夕子』はどのようにして生まれた作品ですか?
昨年5月のコミティアで、新刊を売りたくて描きました。もともとは違う話を考えていたのですが、うまくまとまらなかったため、別の話を急いで書き上げました。それがこの漫画です。
若葉がパンケーキを夕子に投げつけるシーンがありますが、これは「いつか描きたい」と思っていたシーンの1つです。このシーンを出発点に話を組み立てました。
――文学系女子の夕子とその親友の若葉、それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
夕子はパンケーキを投げつけられる人間なので、失礼だがなんか憎めない…みたいなキャラクターがいいだろうと考えました。私の以前の職場で、口調や振る舞いが特徴的で周りからやや浮いている人がいました。誤解されることも多い人でしたが、私はその人のことを信頼していました。そこで、その人を夕子のモデルにしようと考えました。
若葉は、ツッコミとして夕子を引き立ててもらいつつ、夕子に対する態度が一貫していない様子を意識しました。夕子を好きだし尊敬しているけど、やっぱりこういうところは許せない!という気持ちの揺れを描きたかったです。
――本作では、夕子に苦手意識を持ちながらも友達でいる若葉の繊細な心情がリアルに描かれていて印象的でした。本作に込めた思いや「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
自分自身、人間関係において「好きだけどこういうところ苦手だなあ、でも大切な人だな」ということはよくあるので、そういった友情が描きたかったのかもしれません。また浮いてる事はマイナスに捉えられることも多いですが、他にはない魅力を持っているからこそ浮いてるのではと考えています。そういった事が伝われば嬉しいです。
――宮子玲子さんが本作の中で特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?理由と共にお教えください。
ラストの、夕子の言葉で若葉が振り返って夕子が笑顔になるところです。2人の表情がよく描けたと思っています。あとパンケーキを投げつけるシーンも描いていて楽しかったです。
――宮子玲子さんはこれまでにも『友達やめる』や『マナちゃんの大脱走』など、人間関係によって生まれる感情をテーマにした作品を多く描かれていますが、創作全般においてのこだわりや特に意識している点があればお教えください。
パンケーキを投げつけるシーンもそうですが、現実世界ではそうそうない事を漫画の中で見たいなと考えています。『友達やめる』でも、最後友達を見捨てて自分のしたい事を優先してしまう主人公を描きたくて話を考えました。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
最近感想をいただく機会が増えてありがたいです。本当にありがとうございます。これからも自分が面白いと思うことに正直に漫画を描いていきますので、よろしくお願いします。