自身が演じる“高藤”は「ひとつスパイスを与えなくてはいけない役柄」
――台本を読んでの感想を教えてください。
舞台では最初から最後まで台本で流れが分かるのに対し、ドラマは自分の出演する台本しか手元にないので、実は最初は、前後の物語とどのようにつながるのかのイメージが湧かなかったんです。
ですが自分のシーンを読むだけでも、高藤はちょっと悪役チックというか、ひとつスパイスを与えなくてはいけない役柄なんだろうということが想像できました。
そして、思った以上にスキンシップが多く、薩摩の人間の割にかなり西洋かぶれ。手の甲にキスはするし、ダンスもするし…「なるほど。私にオファーが来た理由がなんとなく分かりました」と、ありがたい気持ちで台本を読ませてもらいましたね。
――高藤とご自身で重なる部分はありますか?
長いこと誰かのことを好きになっていないので思い出しながらですが(笑)。
自分では気が付かないのですが、人を好きになるとガツガツ行くらしいです。僕は全然そんなつもりはないのですが、周りからすると「明らかに出しすぎじゃない?」と思うくらいとのこと。認めてはいませんが、共通点はそこにあるのではないかと思います。
――演じる上での難しさはありましたか?
監督が、僕がフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵役で出演したミュージカル「グランドホテル」(2016年)をたまたま見てくださっていて、高藤のキャラクターを見た時に「伊礼はどうだろう」と思い出してくださったようでして。なので、台本をもらった時に「グランドホテル」の方向性で役作りをしていった方がいいのかなと思ったんですよね。
ただ、高藤はあくまでも日本人なので、九州男児の無骨さは大切にしました。その二つをミックスし、上手にバランスを取るのが難しかったです。
――万太郎の恋敵として恋路をかき乱す重要な役である高藤。伊礼さんから見た高藤の魅力や、演じる上で意識したことを教えてください。
僕はよく、悪役や三角関係の恋敵やクズな役を演じるのですが、実は正義のヒーローよりそういう役の方が好きなんです。
悪いやつには悪いやつなりの正義がある。ただ、そこが詰まっていないと薄っぺらい悪役になってしまうので、そうならないよう演じる上でいつも大切にしています。嫌われたとしても、彼は彼なりに何らかの正義でどうしても譲れないものがあり、だからその選択に至ったという理由づけをしたいなと。
今回も、恋敵ではありますが、僕の中では「初めて本当の恋をした」設定にしているんです。恋敵としてのレベルが低くなると、万太郎の物語、そして「らんまん」の物語が進展していかないのではという思いがありました。なので、そういった細かいことは大事にしながら演じていました。

































