「自分の力がないと駄目なんだと実感」した過去
――6歳から芸能界で活躍されていますが、その中で一番つらかったこと・くじけそうだったことはなんでしょうか。
忘れようとしているのですが、最初の挫折は、6歳で初めて受けた何千人規模のオーディションに受かったことが発端です。永谷園の麻婆豆腐のCMだったので、事務所の先輩の和田アキ子さんがいらっしゃって、うちの事務所を牽引されてきた方と出端から出会うことができて、かなり天狗になりまして…。
そして、2回目のオーディション以降、1次審査で落とされるようになってしまったんです。頂くお仕事は全部、道が用意されているわけではなくて自分の力がないと駄目なんだと実感した、そのときの悔しさは半端じゃなかったです。そこからすごく燃えましたね。泣きまくったのを今でも覚えています。
――初めての挫折がかなり早い時期にあったんですね。
そうですね。幼稚園を卒園するときには、「アッコさんみたいにオーディションがなくても仕事がもらえますように」って文集に書いていたんですよね(笑)。あのときから、アッコさんが僕の中で神格化されました。
あとは、「ひぐらしのなく頃に」(2008年)という作品で初めて映画の主演をさせていただいたのですが、そのときのことも思い出深いです。
僕はそのときバラエティータレントになりたかったんですよ。「天才てれびくんMAX」(NHK教育テレビ)で、アイドルのように歌ったり踊ったり、黄色い声援をいただくこともあったりして、毎回舞台に立つときは“別の誰か”になっているわけではなくて、“自分”を表現するお仕事ばかりだったので、そういうことをやりたくて。
だから、映画の撮影が始まったときは、自分自身が大きくなるために今やらなくてはいけない試練という感覚でした。お芝居に苦手意識があったので、ちょっとつらいけどやらなきゃな…と。そう思ってやっていたら、ただ女の子と並んで歩くだけのシーンで20テークくらいしてしまって。
そのときに必要だったのは、今思えばヒロインとの距離感だったと思うのですが、監督は、それに気付いても僕にあえて言わないでいたんですよね。僕はそのときかなり不安で、すごく考えて、お相手に「ちょっと手をつないでもらっていいですか」と伝えて。それで手をつないで歩いたテークがOKになったんです。
そのときに、なんかもう雷がガーンと落ちた感じがあって。「監督は僕が知らない方程式を知っているんだ…その方程式を知りたい」と思いました。これは挫折というか、そのときのことが今でもフラッシュバックするぐらい、転機だったなと思います。
また、「HiGH&LOW THE WORST X」(2022年)の轟洋介という役では、役に飲まれて演じることが怖くなったこともありました。インテリヤンキーで非常に好戦的なキャラクターだったので、いろいろ通ってアクションもかなり練習していたのに、急に芝居であろうが人を殴るのが怖くなってしまったんです。
強い役だから、多分プレッシャーだったんだと思います。“絶対うまく演じなきゃいけない”と、変に自分に重圧をかけてしまって。そのときも結構挫折感を味わいましたね。
瞑想、入浴、有酸素運動…前田公輝を支える三つのマイルール
――そういった挫折を乗り越えるためのマイルールはありますか?
最近はもうあまり挫折しなくなりましたが、悩んだりするときは10分間の瞑想ですね。今、ありがたいことにいくつかの仕事を重ねてやらせていただいていて、そうするとやっぱり「今、俺誰だ?」みたいに思うこともあって。
あとは「ちゃんと100%でできているか?」みたいな、ショート状態になるんですよ。これを整理しないといけないので、呼吸です。“息”という字も“自分の心”と書きますよね。なので、そこを整えると本当に面白いぐらい整います。
それと、湯船につかることと有酸素運動。この三つが僕の中では支えですね。湯船は体もリラックスして心もなだらかにしてくれるし、有酸素運動はシンプルに体が前に向かっているので気持ちが前向きになるんです。
――心身ともに健康でいるために、普段から心掛けていることはありますか?
感情で言葉を発さなくなりましたね。毎回頭の中で一度会議してから言葉を出すようになりました。このおかげで心身ともに健やかになっています。感情的にならず、自分の中で一度整理して答えが出ている状態で話すと、例えばそれを否定されたとしても自分は納得がいっているので心が荒立たないんです。
同時に頭痛も伴うのですが(笑)、頭を使っているときはすごく効率がいいんですよね。脳も筋トレと同じでどんどん可動域が増えるので、これを年々続けていけばもっと強化されて、もっと面白い発見ができるようになるかなと思ったりしています。
――現在32歳にして芸歴26年の前田さん。今後の展望や目標があれば教えてください。
役者としていろいろな顔を見せられたらいいなというのはもちろんですが、20代後半からミュージカルなど新しい挑戦もしていて、初期段階というよりはもうある程度自分の体がなじんできている感覚があります。
なので、あれもこれもということではなくて、今あるものをさらにブラッシュアップして高めることが自分のスキルにもつながるし、楽しそうだなと思いますね。
――最後に、今回の放送の見どころと視聴者へのメッセージをお願いします。
今回僕が一つだけ手応えを感じたのは、「ブルーグリーンアルジー」の色みを「エイリアンを絞った感じ」と表現したときです(笑)。そういったパワーワードを残せるように、今後もっと引き出しを増やしていきたいと思います。
芸人さんだけでなく紀香さんや糸井さんもいらっしゃいましたが、みんなでお笑いを作ったような感じもあってすごく笑えたし、温かみのある収録でした。なおかつ、紀香さんやバービーさんの美容知識もとても勉強になりました。
初めての施術や器具・製品だと不安に思う方もいると思うのですが、今回の放送を見るだけですごく勉強になるし、背中を押してもらえると思います。ぜひ楽しみにしていただけたらうれしいです。
マガジンハウス
発売日: 2023/10/25