コミックの映像化やドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は端丘さんが描く「バイトの宮川くんは店長が好き」シリーズの「化粧男子のバイトの面接」を紹介する。作者である端丘さんが9月9日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、6.7万件を超える「いいね」を寄せられ、普通扱いされない苦悩を抱える化粧男子が転機を迎える展開が大きな反響を呼んだ。本記事では端丘さんに、作品のこだわりなどについてインタビューをおこなった。
化粧をする事が“普通”の化粧男子の苦悩とは…
物語は、宮川という青年がバイトの面接に来ている所から始まる。「春から大学生?」「ハイ、高校は卒業しました」と面接をしていたところ、面接官がじっと宮川を見つめて「…君、男なのに化粧してるの?」と問う。
「…はい…生まれつき瞳が変わった色で浮くのでそれに合うように…」「肌も弱いので日焼け止めかBBクリームを」と答えた宮川に返ってきたのは、「君みたいな子はさあ」「ホストした方が良いんじゃない?」という心無い言葉だった。
面接が終わった帰り道、「バイトの面接してた人?」「イケメン~」と宮川を見る店員たち。「なんだよ、スーパーだって女は化粧してんじゃん」と宮川は心中でこぼした。「俺にとってはこの顔が普通なんだけど」化粧した方がしっくりくる、と改めて考える宮川。
しかし別の店に面接をしにきた宮川は、「えっ!!何曜日でもいいの!?土日も!?」「採用採用秒で採用~~~!!」と歓喜の声で迎えられていた。店長の男性はにこにこと笑顔を浮かべながら、宮川の応募に「土日入ってくれる子がなかなか見つからなくてさあ、今日から時給50円アップしちゃうね!やった!ついに俺の20連勤に終止符が…」と感極まったようす。
不安に感じた宮川が「俺化粧してますが大丈夫ですか?」と声をかけると、宮川の顔を見た店長から意外な言葉が飛び出す。
繊細なテーマを取り扱った同作には、SNSで「作中のワードパワーがすごかった…」「とにかく刺さる作品」「宮川くん表情少ないのに、繊細に感情が表現されててすごい」といった声が相次いだ。
ようやく出会えた、“自分にとっての普通”を受け入れてくれる相手
――本作を創作したきっかけや理由があればお教えください。
最初は趣味の4ページの単発BL漫画だったのですが続きが読みたいと言って下さる方が多かったので、毎週書く様になりました。化粧男子を取り入れたキッカケは、弟が化粧をしていて、私が最近行き始めた美容皮膚科の受付の男の子もかなりしっかりメイクしていたのですよね。
明日カノのドラマ版の翼君ばりに。職種や場所によっては本当に浸透してるんだなと感じまして、取り入れるのが今時かなと。彼らの様に男性も自由にすればいい、性別ではなく個人の好みで選択できればいいなと思います。
――本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。
明るくゆるいBLです。気軽に読んで欲しいです!
――宮川は「化粧した方がしっくりくる」といっていますが、彼が化粧を始めたきっかけはなんだったのでしょうか。
宮川はド田舎出身で、東京に出るぞ!と思った時に、都会の人はみんなこんな感じなんだと思って、モデルや俳優の写真を参考に化粧にもチャレンジしたのだと思います。 モデルさんも俳優さんも大体お化粧されてますよね。(一部の特別な人だけのものではないと思うんです。TPOに合っていれば普通の人も普通にして良いかと…)
ちなみに彼の言う「しっくり」とは豆腐はそのままでも食べれるけど、醤油かけた方がしっくりくる程度のものです。
――男性の化粧にも動じなかった店長ですが、おおらかな考え方はどこで培ったのでしょうか。
宮川は田舎では浮いていましたが、作中の舞台のカラオケ店は都内の真ん中なので、化粧男子はそこら中にウジャウジャいて、全然普通。ちっとも珍しい事ではなかったのだと思います。
また、初対面時の店長は宮川のルックスにも性的思考にも興味がないので、「普通の大学生」以上のジャッジをしていません。なぜなら、店長は他人のそういった事に深入りをしない、興味を持たない事をマナーだと思っているからです。
…それはAbema TV的なもので学んだ様ですw(バイトと店長以上の関係になるにつれ、その辺りは変わるのですが)
――宮川は「店長からは普通に見えているのか」を気にしていましたが、彼自身は「世間一般の普通」にどこまで重きを置いているのでしょうか。
宮川は元来人目を気にするタイプです。心根では周りに馴染みたいと思っています。何を普通とするかは、その人と取り巻く環境によって変化すると思いますが、宮川は地元を出るまですごく目立つ存在でした。必要以上に皆に興味を持たれていました。
彼自身がナチュラルにしている行動を注意深く見られる事があったかもしれません。これ以上目立ちたくない一心でゲイである事も隠していました。彼にとって目立たない事が普通なのだと思います。気にしてはいたものの、彼は普通にはなれませんでした。開き直るしかないですよね。
――今後の展望や目標をお教えください。
映像化のオファー待ってます!!
最後に補足させて下さい。今回は化粧男子について語りましたが、本エピソードは主人公がたまたま化粧をしていただけで、男子の化粧の是非がメインテーマではありません。本シリーズの「バイトの宮川君は店長が好き」のひとつのエピソードとなっているので、ぜひ本編もあわせてご覧ください。彼のファッションについては、店長と同じくらいの受け止め方で、ふーん宮川君って化粧してるんだ〜くらいの気持ちで、色んな方にメインのラブコメを楽しんで読んでいただけたら良いな!と思います!