さまざまな距離を一足飛びで詰められる“義兄弟”は最強アイテム
最後のポイントはフォンホ—とチェン・チンの関係が義兄弟であること。血が繋がっているわけではないが、義兄弟は家族という絆で結ばれているから親密度は高い。そして、家族だから同じ家に住むという設定も違和感なく必然的だ。ラブストーリーでは出会った2人が距離を詰めていくのがもどかしく焦れったいものだが、義兄弟は一足飛びに心理的にも物理的にも距離が近くなる。2人で一緒に過ごすシーンもたっぷりと見られて、それだけ萌えもたくさん得ることもできる。
フォンホ—は序盤でハネムーンに向かう母から電話を受け、新しい弟と仲良くするように告げられる。そして訪ねてきたのは人気アイドルのチェン・チンだ。かくして、雲の上のような存在の人気スターとひとつ屋根の下の暮らしが始まり、視聴者は彼らの日常を存分に眺めることができるのだ。
小競り合いながら夕食をともにしたり、同じベッドで重なり合って寝たり、観賞魚を並んで眺めたり。弟のチェン・チンがわがままを言って、フォンホ—がお兄さんらしく優しく世話してあげていてキュンとさせられる場面が散りばめられている。義兄弟は萌えをいっぱい速攻チャージできる最強アイテムなのだ。
義兄弟ですぐにゼロ距離になるチェン・チンがかわいく俺様に振る舞い、なんだかんだ言いつつ懐深い兄のフォンホーが面倒を見て、BLファンのモンモンが妄想を供給してくれる。「HIStory 離れて、離さないで」はさまざまな方位からの萌えを素早く与えてくれる、充足感に満ちたボーイズラブストーリーなのだ。
◆構成・文=牧島史佳