制服が嫌なんじゃないかと誠は翔の心に寄り添おうとする
美香にお弁当を渡され「帰ってきたくなったらそうしていいんだからね」と送り出された翔は誠の車の後部座席に乗り込み、緊張しているのかそっと自分で自分の手を握る。誠は横目で見守りながら「こんなときにかけてやる言葉も思いつかないなんて、本当に父親であることは難しい」と心のなかでつぶやく。
高校近くまで来て車を停めた誠は動こうとしない翔に「このまま帰ってもいいんだぞ」と声をかける。「もしかして男子の制服がいやなんじゃないか。もし、そうなら無理しなくていい。私服通学の学校とか制服を選べる学校に転校すればいいんだから」と誠が言うと「お父さんってそういうこと考えないんだと思った」と翔。
誠が「そうだな。少し前までは考えたこともなかった。これもアップデートだ。大地くんのおかげだよ」と言うと、翔は「制服はこれでいい。僕は男であることは別に違和感はないんだ。でも、自分のことよく考えてみて男っぽく振る舞うとか、乱暴なのが嫌い。あと、かわいく綺麗になりたい」と言って口を結び、そして車を降りる。
しかし、足取り重く翔が立ち止まってしまうと、誠も車を降りて「翔、自信を持て。お前、父さんの長年の圧力に耐えてきた。これぐらい頭の固いわからずやはそうそういないだろ。お前には十分な免疫がある」と鼓舞する。翔が振り返って誠を見ると、誠は真剣な顔をして親指をたてる。そんな誠に翔は微笑んで「行ってきます」と行って踏み出していくのだった。
翔が一歩踏み出せたことが嬉しく、誠と翔の心の距離が近づいたことも前向きな気持ちにさせてくれた。
◆構成・文=牧島史佳

rhythm zone
発売日: 2023/12/05































