所ジョージがMCを務める「所さんの世田谷ベース」(毎週土曜よる10:00-10:55、BSフジ)の第418回が、7月13日(土)に放送された。所ジョージ的モノの考え方や閃いた遊び、世の中の楽しみ方を発信する同番組。今回は「つまり、思想なのだよ。」として、所が作詞作曲を務めるかたわらクリエイティブとは何なのかを語る内容が放送された。
矢吹プロデューサーとの意見が食い違うことも笑って語る所
番組が始まると、なにやらスーツの集団が所と番組制作の話について語っている。表敬訪問に訪れたというBSフジの常務取締役に対しても、「遠回しに『邪魔だ』って…」と笑いを交えるのが所流。「18年目だっていうんで、毎年こうやってあいさつ来てくれるんですよ」と改めてカメラに向かって説明しながら、18年間続いた番組に思いを馳せる。
「18年もこの『世田谷ベース』やってるって、まあすごい話ですよ」「目玉どころがあるわけではなく、いま売れている流行の人がいるわけでもなく…」と同番組の珍しさを語る所。「今日だって、カメラさんが来るまで何も考えてないんだから」とざっくばらんに明かしつつ、話題は作曲について。
木梨憲武のラジオの突発企画で、俳優・光石研の歌「ミツケンサンバ」を作ることになった所。おそらくラジオのなかで1回流して終わりになるだろうと考えて作った曲だったため、1番だけ作ったという。できあがった曲を矢吹プロデューサーに送ると、「いいねコレ!いままでで一番いいんじゃないの?」とコメントが返ってきたそうだ。「あの男また変わってて、私が『いまひとつだから』とか言うと逆のこと言うんだアイツ!」と気安い関係性が伺えるエピソードに、スタッフから笑い声が上がっていた。
そうして完成した曲は、かわいがっているお笑いコンビ・TKOの2人に歌わせようということに。「矢吹フェス」にも来た2人だったが、持ち歌がないためにぎやかししかできていなかったことを所は見ていたのだ。「今度イベントのとき、みんなで歌えるから」とさりげなく寄り添う言葉から、人柄が覗く。
ただあとから聞くと「ミツケンサンバ」は木梨が歌う予定だったそうで、声をかけたTKOは宙ぶらりんの状態に。そこで盛り上がっていた2人がかわいそうだと、所はもう一曲かきあげたという。「いじわるな歌なの。お互いの顔を指さして『こんな顔を見たらご用心』っていう…」TKOがステージを盛り上げられるようにという思いを込めた、ユニーク曲だ。
しかし「曲ができた」スタジオに向かったところ、そこには本格的な演奏ができるメンバーが勢ぞろい。軽い気持ちで作った「ミツケンサンバ」もTKOの曲も、かなり力の入った生音の音源になってしまったという。
作品をつくる時に必要なものは思想だと語る所が持つ広い視野
場面は変わって所の部屋。趣味で埋め尽くされた部屋で話題は最近作っているという“象の像”の話へ。粘土で作られている像は両手で持つほどの大きさで、2足で直立している象をかたどっている。
新聞や紙粘土を使って作り始めたという像。所は像について、一目見たときに“紙粘土ではなく皮膚だ”と思えるような造りを目指しているのだと語る。濡れた紙を貼り付け、乾く直前で手で寄せてしわをつくる。このひと手間で、紙粘土ではなく一見してしわが刻まれている肌に見せることができるのだそう。
「なんかあれだね、美大の講師みたいだね」と笑いつつ、話題はより深い方向へ。作品において、最も大事なものは思想だと語る所。積み重ねていけば手に入る“技術”ではなく、作品に思想をどう込めるか、そして込めた思想を見た人間にどう読み解かれるのか。そういった部分に重きを置いてつくっているそうだ。さらに「(見た人が)これになんの思想を感じるかってのが面白いわけ」と、モノづくりの面白さを熱く語る
たとえば今回所が作った象の像は、象の頭部が頭と尻から生えている。タイトルは「Desire(欲望)」ということで、「1つが喜ぶと1つ苦しい所ができる。苦しい所が1個あれば1つ喜ぶ…みたいな」と語り、人生観に絡めているのだとか。
なお「Desire」はサブタイトルで、本当のタイトルは「一頭前後象」。「一等前後賞」のダジャレだが、そこにも隠れた意味がある。たとえば宝くじをバラで買った人が一等を当てたとき、「なんで連番で買わなかったんだ!前後賞も当たってたかもしれないのに…」とさらなる欲をかいてしまうというシーンをイメージしたのだと明かす。
「欲ってキリがない。良い思いをしていても、まだまだ…なんとか…って思っちゃう」と語った所。つまりそうした所の人生観、思想を表わしているのが「一等前後象」なのだ。そしてさらに、製作中の「自分とのやり取りが面白い」と語る。
制作中は紙粘土で造形した瞬間は「このまんまでもいいかな」と思うくらいのクオリティができあがった。だがこのあとに紙を貼って解像度を上げる予定だった自分が「あなたココに紙貼るって言ったでしょ」と声を上げ、さらにもう1人が「貼って失敗したらどうするんだよ。ここまでで上手いんだからこれでいいんじゃないの」と否定する。そうして頭のなかと現実で試行錯誤を繰り返し、作品はできあがっていくのだという。
モノづくりに向き合う時間を「楽しいねえ…」と語り、皆さんもやってみてくださいと語りかけるのだった。