宝「こっちがむきになるくらいは、まあ」
宝は「ありだな」とひとり納得するが、大進は何が起こっているかもわからない状態で目を丸くする。
「いいよ、つき合ってやる」と自分が大進に言わせておきながら上から目線で告げる宝。事態が飲み込めずに大進が「付き合う…俺と先輩が?」と聞くと、「だからそう言ってんだろ」と宝は言う。
「先輩も俺のこと好き…?」と大進が尋ねると、宝は座り直して「そこまでは言ってねぇ」と言う。「じゃあ、なんで?」と大進が食い下がると、宝は目を逸らして「お前がずっと気づかないならほっとくつもりだったけど、やっと気づいたかと思ったらさっさと引かれて…」と説明する。宝を凝視したまま「え…?」と大進が驚くと、「こっちがむきになるくらいは、まあ」と宝は言葉を濁す。
「それってヤケクソってことですか?」と大進が聞くと、宝は少し気まずそうに目を逸らして「ヤケクソでキスまでするかよ」と不服そうに言う。そう言われて大進は「キ…!」と口元に手をやり、やっと宝とキスしたことを自覚する。そんな大進を見て宝は「反応おっそ」と笑うのだった。
どこまでも大進に言わせてばかりではっきりと断言しない宝が、さすがに焦れて「ヤケクソでキスまでするかよ」と言ってしまう様子にキュンキュンさせられる。キスしたことを時間差で自覚する大進の鈍さは安定のかわいさで、彼にも胸ときめいた。
◆構成・文=牧島史佳