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【漫画】明日死ぬかもしれないからこそ…戦地で“煙草”を渇望する兵士の心理描写に「なんとも人間臭い」「沁みるわぁ」の声

2024/09/10 08:30

明日死ぬかもしれない極限状態の中、求めたもの
明日死ぬかもしれない極限状態の中、求めたもの画像提供/清澄炯一さん

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、清澄炯一さんが描く『戦野の一服』から第1話(X投稿時のタイトル『たとえ明日死ぬと分かっていても、煙草だけは手放せない』)をピックアップ。

2024年8月1日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、7,200件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、清澄炯一さんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。

戦地で兵士にひとときの安らぎと日常を与えてくれる“煙草”

『戦野の一服』より
『戦野の一服』より画像提供/清澄炯一さん

物語の舞台は日露戦争、旅順攻囲戦の戦地。すでに日本側から二度の総攻撃を仕掛けているが失敗に終わっており、明日はいよいよ三度目の総攻撃に打って出ることになった。

大きな攻撃を前に、歩兵第一連隊 第三大隊 陸軍歩兵軍曹の西東は、苛立ちを隠せずにいた。一度目の総攻撃を終えて以降、慰問品として送られてきていた“煙草”がめっきり送られてこなくなっていたのだ。

兵士にとって煙草はとても重要な存在だ。常に死と隣り合わせの戦地に身を置き、精神も擦り減るような環境の中で、煙草はわずかな精神的余裕や楽しみを与えてくれる嗜好品なのだ。そして、軍隊に入ってから煙草を覚え、いつの間にか煙草を呑むのが“日常”となっていた西東にとっては、煙草を呑むことこそが緊迫した戦地で束の間の“日常”を感じられる瞬間なのだ。

そして、煙草が戦地へ送られてこない状況に不満をこぼした西東は、「明日死んで来いって言うなら せめて 煙草が…欲しい‼」と空へ手を伸ばす。するとそこへ現れたのは、陸軍大将の乃木希典。旅順攻囲戦の前線まで視察にやってきたのだった。西東の言葉を聞いた乃木大将は、自身が持っていた煙草を箱ごと渡す。恐れ多い乃木大将の煙草…西東は箱から一本だけ受け取った。それで充分だった。周りの兵士たちも残りを我先にと受け取っていく。そして、すぐに火をつけ一服を始めるのだった。

しかし、あれだけ煙草を渇望していた西東はそれを懐にしまう。戦場はほんの僅かな“ツキ”が生死を左右させる。明日は三度目の総攻撃。西東は僅かでも“ツキ”を使い果たすわけにはいかないと思っていたのだ。

そして迎えた第三次旅順総攻撃当日。西東が所属する第三大隊は生存兵わずか数名の壊滅状態だった――西東は生き残った。僅かな“ツキ”を掴み続けた西東は側で生き残った兵士と自分達の生を噛み締めながら、“とっておき”の1本を呑むのだった。

本作の投稿には、「なんとも人間臭い」「この心情表現は沁みる」などのコメントが寄せられ、戦争という極限状態から感じられる人間ドラマに引き込まれる読者が続出した。

作者・清澄炯一さん「休憩時間に読んでほっと一息(一服)つけるような読み心地を目指しました」

『戦野の一服』より
『戦野の一服』より画像提供/清澄炯一さん

――『戦野の一服』を創作したきっかけや理由などをお教えください。

新作の依頼を雑誌編集さんからご連絡いただいたのがきっかけです。

日露戦争と食をテーマにした「めしあげ!!」の連載終了直後でしたが、まだ日露戦争を舞台にした作品を描いてみたいと思っておりましたので、日露戦争と煙草の企画を作りました。

ニッチすぎるテーマだとも思ったのですが、幸いにも企画はすんなり通り、短編連載作となりました。

――本作を描く上で、特に心がけたところ、大切にしたことなどをお教えください。

読者年齢層が高めのいわゆる「大人」の週刊青年誌での不定期連載だったので、わずかな休憩時間に読んでほっと一息(一服)つけるような読み心地を目指しました。

――今回、ご投稿された第1話の中で、特にお気に入りのシーンやセリフを理由とあわせてお教えください。

15ページ目の「ほんのちょっとの毛の先ほどのツキ」というセリフです。

日常の中にほんのちょっとしたツキを必死にかき集めて、地獄の戦場を潜り抜ける。

戦闘も戦場では日常の延長線上にあるものですから。

そういう思考のキャラクターの漏らした心情みたいなモノローグですが、気に入っています。

――第2話以降の見どころや注目してほしいポイントなどをお教えください。

第8話は戦場で捕虜になり、ロシアに送られた日本軍人の話です。愛媛県松山市にあったロシア人捕虜収容所は有名ですが、ロシアにも日本人の捕虜はいたのです。両国とも日露戦争と太平洋戦争の捕虜に対しての扱いとは全く違います。

明治と昭和の違いをとても感じるエピソードでしたので、ぜひ読んでいただきたいです。

――今後の展望・目標をお教えください。

いま『ヤミナベ~占領下日本敗残兵物語~』を個人で連載しております。

太平洋戦争後の1946年の占領下の日本が舞台の漫画です。

最新話を電子書籍で配信する個人連載スタイルなのですが、とことんまで自分の描きたい漫画を描いてみるという挑戦です。

もし『戦野の一服』が気に入っていただけましたらこちらも読んでいただけると嬉しいです。

――最後に、読者やファンの方へメッセージをお願いします。

兵隊を主人公にした話、戦争漫画はまだ描いてみたいものがたくさんあります。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

ザテレビジョン マンガ部まとめ

■作者X(旧Twitter):清澄炯一[@kiyopiyo_]

■今回の紹介作品『戦野の一服』を読む:BOOK☆WALKER楽天Kobo

■作者が創作する別作品『ヤミナベ ~占領下日本敗残兵物語~』を読む:BOOK☆WALKER楽天Kobo
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  • 明日死ぬかもしれない極限状態の中、求めたもの
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