8-9話で描かれるボンソクの両親、ミヒョンとドゥシクの若い頃のエピソードも感動的だ。組織の同僚として出会った2人は付き合うようになるが、同時にミヒョンは組織の危険分子であるドゥシクの監視役でもあった。やがて組織から追われる身となったドゥシクは、一度は失踪するものの、ある嵐の日、危険を冒してミヒョンのアパートに姿を現す。戻れば組織に捕らえられるのは分かりきっているのに…。抱き合う2人は瞬く間に包囲されるが、ミヒョンは彼が本当に自分を愛していたことを知る。
ごく普通の生活を送っていた超能力者たちが、超能力者であるために試練に遭遇し、愛する家族や恋人、友人を守ろうと命を懸ける。そこに生まれる愛のドラマが「ムービング」という作品の真骨頂だ。
カンフル作品の魅力「中心に人を置きます」
“人間”を深く描くことが、カンフル作品の魅力だ。
11月、ウォルト・ディズニー・カンパニーのラインアップ発表イベントのプレスカンファレンスで、物語を作る際の流儀について「中心に人を置きます。どのような人が動いて行動するのか、登場人物とその関係性に重点を置いて物語を構成しています」と話したカンフル。
派手なアクションやスリラー、ミステリーの要素が絡み合って複雑なストーリーを描いているように見えても、その中心には常に“人間ドラマ”がある。そのドラマが実力あるキャスト陣によって具現化されることで、多くの視聴者の心を捉えている。
その上、かかっている製作費もけた違い。超能力を題材としたアクションスリラーだけあって、製作費は約650億ウォン(約70億円)にも上ったともいわれている。さまざまな要素が重なり合って、「ムービング」は多くの視聴者に届く作品となったのだろう。その結果、「百想芸術大賞」で大賞含む最多3冠、「青龍シリーズアワード」で大賞を獲得したほか、「アジアコンテンツ&グローバルOTTアワード」で最多6部門受賞を達成した。
爽やかな青春ストーリーと胸を焦がすロマンス、心温まるホームドラマ、そして息もつかせぬ本格アクションと、さまざまな要素が詰まった「ムービング」は、制作発表会見でパク・インジェ監督が「ギフトセットのようなドラマ」と語ったほど。2023年を代表するドラマとしてふさわしい超大作といえよう。既に制作が決まっているシーズン2も楽しみでならないし、同じ制作陣による「照明店の客人たち」も期待して良さそうだ。
「ムービング」「照明店の客人たち」はディズニープラスのスターで独占配信中。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
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