今、邦ロック界隈で話題になっている美咲(Vo.Gt)、さすけ(Ba.)によるバンドユニット、ミーマイナー。シンガーソングライター美咲と、ボカロPのもの憂げ(さすけ)により9月に結成されたばかりのバンドだが、10代、20代を中心に、トレンド発信となるSNSで人気を高めている。これから来るに違いない2人に、ミーマイナーの音楽を聞いた。
美咲からさすけを猛烈勧誘してバンド結成
――シンガーソングライターの美咲さんとボカロPをされているさすけさん。どういう流れでミーマイナーを結成されたのでしょうか?
美咲:まず私がバンド大好きだったのと、個人でもの憂げ(さすけ)さんのfeat.アルバムに参加させていただときに、楽曲の良さに感動したんです。「バンドを組んだらこの人の曲を演奏できる」って思って、私も自分の曲を披露したかったし、さすけさんの曲も歌いたかったので、何回もお願いして組んでもらいました。
――美咲さんからのアタックだったんですね。
さすけ:feat.アルバム「詩華集」は、ボカロで作った曲を実際に歌い手に歌ってもらうというコンセプトのものです。そのときにボーカル募集をして、美咲さんが連絡をくれたんですね。僕が美咲さんが所属しているグループに楽曲提供をしていた関係値はあったのと、僕も「詩華集」を作ったことで「誰かと組んでみたい」と思っていたんです。美咲さんから熱量高く誘っていただけたので、それならと決めました。
――美咲さん、アイドルを7年活動されていて、今は弾き語りライブもやられていますが、「バンド」にそこまで強い思いがあったのは知りませんでした。
美咲:(バンド熱は)ここ1~2年の話ですね。マカロニえんぴつさんが大好きになって、それからバンドってカッコいいなって興味を持って。あと、アイドル時代のメンバーが新しい夢を見つけて次々と卒業して行ったのを見て、私も何か見つけた方がいいのかなって焦っていたのはあります。でも私は仲間が好きだから、一人で何かを目指すのに魅力を感じなくて、ソロではなく「バンド」がやりたいと思ったんです。
さすけ:僕目線で言うと、美咲作詞作曲、さすけ編曲で、美咲さんのグループ時代にも楽曲をリリースしたことがあって、”自分が弾き語りで作った曲が編曲されてカタチになる”というのが嬉しかったのかな?と思いました。そういう楽曲作りのスタイルが楽しかったのかな?って。僕はボカロPという職業上、ギターもベースもピアノも、ミックスもできるので、そこが美咲さんの弾き語りと噛み合った感じですね。
感情を言語化するのがうまい美咲の歌詞
――関係値はあったとは言え、最初はお互いにどんな印象は持っていましたか?
美咲:私の方からだと、面識はさほどなくても「めっちゃいい曲を作る人」だと知っていたので。気になって、さすけさんのSNSも初期からずっとフォローしていました。私の作詞作曲って、さすけさんから学んだようなものなんですよ。歌詞ってこういう感じで書くんだ、このコード進行めっちゃいいとか。それを真似してみて、私の中では勝手に師匠と仰いでいます。
さすけ:僕は最初は美咲さんのことは楽曲プロデュースしているアイドルの1人という印象しかなかったんですけど、いつの間にかTikTok(※「雲グミ」名義で美咲が弾き語りをアップしている)の弾き語りがバズリだしていて。そのタイミングで美咲さんのイベントにゲスト出演して、2人でアコースティックライブをしたら普通にギター弾けるんですよ。聞けば路上ライブもやっているって。何だかその頃からただ者じゃないなって感じはしていました。
――さすけさんから見て、美咲さんの作る楽曲のよさ、ボーカルとしての魅力はどういうところにありますか?
さすけ:感情を言語化するのがうまいですね。ストレートよりは比喩を挟んでくるタイプみたいで、それを丁寧に書きつつ、熱量は失わない書き方。けっこう感動してしまうような歌詞が多いのも特徴ですね。歌声は逆にストレートで、真っすぐな感じでフラットに聴けるのがいいと思います。声質も聴く人を選ばないタイプで、いきものがかりさんみたいに真っすぐに入ってくる歌声だと思いますね。
――2人とも作詞作曲ができますが、ミーマイナーのスタイルとしては美咲さんが出したのをさすけさんが編曲していくのが基本ですか?
美咲:いえいえ。これからはむしろさすけさんの曲が増えていくと嬉しいなと、個人的には思っています。
さすけ:ファーストEP「愛の自販機」に収録したのは美咲さんが書き溜めていたものから選んだ曲で、それが好評ではあったんですが、美咲さんも新曲を量産できる時間があるわけではないので僕もどんどん出していかないとなって。最終的には1対1ぐらいのバランスになるのがいいと思っています。実際、ライブでの曲はすでに半々ぐらいになってきています。
――9月に結成して2か月あまり。反響や手応えはどうですか?
さすけ:SNSだとTikTokとインスタが約3~4000人、YouTubeチャンネルが2500人を超えていて、「いいね」の数はぐんぐん伸びています。宣伝もしていないのでそんなにフォローしてもらえるとは思わなかったし、最近特に急に伸びていてびっくりですね。
美咲:今日も見ました。有名なインフルエンサーの方が「これから来るバンドを教えてください」みたいな投稿をして、そこにミーマイナーを薦めてくれている人がけっこういたんです。
さすけ:裏ではいろいろオーディションも受けていて、全ていいところまで進んでいる感じです。
ミーマイナーの2大テーマは「エモさ」と「楽しさ」
――これから楽曲がどんどん増えていくと思いますが、どんなテーマの曲を届けたいか、音楽性の部分を教えてもらえますか?
美咲:私は音楽で人を救いたいとか、誰かのためにとか、そういう大それた気持ちは実はなくて。今は自分の内側にあるもの、感情を書いている感じです。それがきっと一生ものの曲になると思っていて、誰かの心に刺さって応援してもらえるようになったら嬉しい。きっとこれからもそういう曲を書いていくと思います。
さすけ:ミーマイナーの2大テーマに「エモさ」と「楽しさ」があって、「エモさ」では歌詞やメロディーで心が揺さぶられるような楽曲を追求していきたいというのが2人の共通した音楽性になっています。もう1つの「楽しさ」は、じつは僕もコロナ禍でバンドができなくてボカロPを始めたという経緯があるんですよね。やっぱり1人でやるのは寂しい部分もあって、せっかく美咲さんに誘ってもらえたので、スタジオやライブ会場で音を立ててやる楽しさを伝染させて、見ている側も楽しめるような音楽を作っていきたいと思います。
――ファーストEPの「愛の自販機」では、どの曲が一番聴かれていますか?
美咲:「ワンルームナイト」がめっちゃ広がっています。自分たちでもいい曲だと思って出しているんですけど、まさか一番広がる曲だとは思わなかったのでびっくりです。ワンルームでの生活を想像できる歌詞で、けっこうリアルな描写。あまり難しくないというか、等身大な感じの歌詞なので、そこに共感してもらえているんじゃないのかなと思います。
――収録曲のいずれも、サウンドとしてはギター・ベース・ドラム・ボーカルの4枚でバンドらしいシンプルな方向性ですね。
さすけ:ボカロPでは打ち込み系の音楽を作っていますけど、ミーマイナーはライブを主体にしたいので、生バンド以外の音は使わないようにしていくつもりです。やっぱりバンドはライブで演奏するのが一番カッコイイですし。
――今後の活動について。メジャーレーベルからデビューしたいとか、これからの目標はありますか?
美咲:その辺は全部さすけさんにお任せしています。私はバンドができるだけで満足なので、あとはさすけさんに付いていくだけです。
さすけ:僕もけっこう流れに身を任せているんですけどね(苦笑)。こんなにすぐ注目されるとは思わなかったし、これからのことを想定してもあまり意味がない気がしているくらいです。
――これからの活動に期待ですね。念願だったバンド活動、燃えてますね。
美咲: 「毎日幸せです!」 (笑)。