
「長い間、忘れてたよ。人を好きになる気持ちを」
ヘは改めて、当時は余裕が無くて他人を気遣えなかった、と謝ると共に、先日ベッドで抱きしめてくれたことは忘れない、と告げた。あの時、彼が寝ていなかったと知り、動揺する彼女に、ヘは、高校に通っていたのも番組出演を請けたのも、ジェヨンに会いたいからだった、と想いを告げた。
彼は「長い間、忘れてたよ。人を好きになる気持ちを」と言った後、もし今恋人が居ないなら付き合わないか、と思いきって尋ねた。彼女が覚悟していた時が遂に来てしまった。答えを先延ばしにはできないと考えたジェヨンは「4」と、先日の選択肢に続きを加えた。それは「忘れて、前の状態に戻る」…。「普通は性格と趣味が合えば付き合うらしいけど、私はそうはいかない性格みたい。ごめん…」と気まずさと申し訳なさを抱えながら彼女は告げたのだった。
「“友達2”ではダメ」
ヘは勇気を出して告白したのに玉砕してしまった。高校時代とは逆パターンだ。しばらく沈黙した後、彼は「OK。わかった」と落胆を隠さずに言い、帰っていった。寂しそうな彼の後ろ姿を見ながらいたたまれなくなった彼女は、ヘを呼び止め、「もっと明るい道を歩いて」と声をかけた。ヘは、「心苦しいなら1つだけ…」と言って、「今みたいに“友達1”や“同級生1”で充分だけど、“友達2”はダメ。1番目で」と頼み、ジェヨンは頷いた。ヘが去った後、彼女は自分が出した答えはこれで良かったのだろうか…と重苦しい気持ちが晴れなかった。一方、ヘも時期尚早だったこのタイミングで告白してしまったことを激しく後悔するのだった。
恋人がダメでも一番の友達でいたい…ヘがどれだけジェヨンを愛しているかが伝わってきて胸が痛い。ジェヨンも彼を想っているのに思い切れない…。仕事では行動力を発揮するのに、恋愛には臆病になってしまう。なかなか前に進むことができない2人の関係に、せつなさともどかしさが募った。

ジェヨン、ヘを侮辱したスタッフと大ゲンカ
ある日、ジェヨンの事務所で、ヘとテリンの番組の記事を読んだ事務所スタッフたちが、彼の噂話をしていた。次第に彼が詐欺の片棒を担いだという過去のデマを鵜のみにした悪口大会へと発展。我慢できなくなったジェヨンは彼らにキレてケンカになり、彼女は男性スタッフに胸ぐらをつかまれる事態に…。その時、誰かがその男を突き飛ばして組み伏せた。ヘだった。彼は小説家・チン・ムヨンとして著作を映画化する許諾のサインをしに訪れ、この騒動に遭遇したのだった。
「詐欺は巻き込まれただけ。母親は自分のせいで死んだ。彼女に触るな、この野郎!」と、普段は感情を大きく出さない彼が見せた初めての怒り。自分が傷つくことは諦めているが、自分のせいで愛する人が傷つくのは許せなかった。そんな彼を部屋から連れ出したジェヨンは、心無い悪口を彼が聞いてしまったことに心を痛めた。「相手にするな。キミまで泥水を被ることはない」と言う彼に、へがこれまで必死で生きてきたのを見てきたジェヨンは「ドロドロになるまで被るけど?それが何!?」と、何も知らない他人に彼が侮辱されるのがイヤなのだ、と告げた。
「人生は、どうせ賭け事」
へは、実は幼い頃から“アミロイドーシス”(異常タンパク質が臓器に沈着して機能障害を起こす疾患)という現在の医学では完治できない難病を抱えていた。定期的に血液検査を受けており、ずっと特に問題が無かったが、先日の検査で異常が見つかってしまった。そして、手に力が入らなくなるなどの症状が現れ始め、新たな薬を処方することになった。「僕は、いつ死にますか?」と尋ねた彼に、医師は「明日かもしれないし、10年後かもしれない」と答えるのだった…。この病気は、進行が人それぞれなのだ。
その帰り道、彼は、先日ジェヨンに「今、19歳の自分に会ったら、何を告げるのか」と、尋ねられたことを思い出していた。彼は「人生はどうせ賭け事だ」と19歳のヘに語り始めた。「大儲けする日もあれば、がく然となるほど多くを失う日もある。キミは、きっとたくさん失い、わずかしか得られない日がほとんどだ」と。その後にジェヨンが続けた。「それでもキミは、不運に賭けはしない。私が知ってるキミなら」と、ヘの目をまっすぐ見つめながら語る彼女に、彼は自分の進む暗い道に少し光が射したような気持ちになったのだった。

「おかしいな、喜んじゃいけないのに」
そんなことを考えながら店の前に着くと、ジェヨンが待っていた。「何で来たのか、知りたい?楽しみだよね?」などと、しばらく挙動不審な様子を見せた彼女は、「私…」と意を決したように言い、「あなたが好き…」と告げた。事務所でのケンカの一件で謹慎になってしまった彼女は、この数日、時間が出来たせいでヘのことばかり考えるようになっていた。これまでの彼の言葉や姿が次々と思い出され、距離をとることは無理だとやっと自覚したのだ。
「このタイミングで…」と呟くヘ。あまりにも間が悪すぎる。「もしかして遅すぎた…?」と恐る恐る彼を見るジェヨンを前にしたヘは「おかしいな、喜んじゃいけないのに…」と言い、「世界が、美しく見える」と告げて微笑んだ。高校時代に一度は終わった“美しい世界”が、再び始まろうとしていた。
この先を考えたら、ジェヨンを悲しませることになるかもしれない。だが、いつ来るかわからない先のことより、今この瞬間の幸せを大切にしよう。ヘはそう考えたに違いない。絶望の中に光を差し込んだのは、ここでもやはりジェヨンだった。
視聴者たちは、突然の悲しすぎる事実に、「死なないよね…?」「嫌な予感…」「お願い、幸せになって」と、この先の展開に不安でいっぱいになった。いつかは死が訪れる。だが、この物語が終わるまでは幸せなままでいてほしいと切に願わずにはいられない。
◆文=鳥居美保

この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。
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