「日本の格闘技は死んでいない」旗揚げから現在まで「RIZIN」激闘の10年を振り返る カリスマたちが紡いだ“熱狂の物語”

かつて世界一の熱を生み出した『PRIDE』の消滅から8年。「もう一度、日本で世界最高峰の舞台を」という悲願と共に、2015年に産声を上げた『RIZIN』。今年で記念すべき10周年というプレミアムイヤーを迎えたこの舞台は、いまや日本の大晦日に欠かせない国民的行事へと成長を遂げた。
レジェンドの帰還から始まり、朝倉兄弟による革命、そして海外勢との対抗戦――。10年という月日が積み重ねたのは、単なる試合結果ではなく、ファイターたちの「人生」そのものである。今年も開催される大晦日決戦を前に、この10年間でリングを彩ったスターたちと共に、RIZIN激動の歴史を振り返る。
【2015年~2017年】“伝説”の継承と“神童”の登場
2015年12月29日・31日、さいたまスーパーアリーナ。旗揚げ大会「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2015」の開催は、格闘技冬の時代に差した一筋の光だった。
29日初大会のメインを飾ったのは、PRIDEのレジェンド・桜庭和志 vs 青木真也の一戦。これは一つの時代の終わりと新しい時代の幕開けを象徴する、残酷で美しい光景だった。
また31日には「PRIDE」にはなかった女子格闘技(ジョシカク)が本格始動。シュートボクシングの絶対女王、RENAがMMAに挑戦し、その後連戦連勝を重ね、その華やかなルックスと強さで瞬く間にRIZINの顔役となった。
そして2016年12月29日、キックボクシング界の神童、那須川天心がRIZINデビュー。初戦でMMAルールでKO勝利を収めると「31日、もう一試合どうですか!」と宣言。中1日で大晦日のMMA2戦目に臨み、アームトライアングルチョークで一本勝ち。その神童ぶりを見せつけた。
2017年には、UFCフライ級3位まで登り詰めた堀口恭司が電撃参戦。圧倒的な打撃と高い技術でオールフィニッシュを達成し、バンタム級トーナメントで優勝。また「THE OUTSIDER」から朝倉海がRIZINデビューを果たし、軽量級がRIZINの主役に躍り出た。
またこの年、女子スーパーアトム級トーナメントが開催され、当時20歳の浅倉カンナが優勝候補RENAを破って大晦日を涙で飾るという、女子格闘技の常識を覆すドラマが生まれた。
【2018年~2020年】“路上の伝説”による革命と、熱狂のスケールアップ
RIZINの熱狂のフェーズを一段階上げたのが、この時期に参戦した朝倉未来だ。『THE OUTSIDER』出身の朝倉未来は2018年にRIZINデビュー、元UFCファイター日沖発を破り、この年3連勝を記録する。
9月30日に行われたRIZIN.13では、RIZINを代表するスター選手の那須川天心と堀口恭司がキックボクシングルールで対戦するドリームマッチが実現。RIZIN旗揚げ後最大となる入場者数27,000人を記録した。
また、2018年大晦日には、プロボクシング世界5階級制覇のフロイド・メイウェザーが参戦。那須川天心とのボクシングルールでのエキシビションマッチは、日本の格闘技の注目度を世界レベルに引き上げた。
2019年、朝倉海が絶対王者・堀口恭司に1R 68秒KO勝ちを収めるという、RIZIN史上最大のアップセットを起こし「朝倉兄弟」は一躍時の人となった。
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により、大会開催が危ぶまれる中、榊原信行CEOはクラウドファンディングを実施し、困難な状況下で8月に2days開催を実施。海外勢の参戦が難しい中、斎藤裕、クレベル・コイケ、萩原恭平、キックから転向した平本蓮など国内のフェザー級選手が台頭することとなった。
大みそかには、右膝の怪我から復帰した堀口恭司が、朝倉海との再戦でカーフキックを駆使し1R KO勝利を収め、バンタム級王座に劇的に返り咲いた。
【2021年~2022年】“柔術”の席巻、団体の壁を超えた対抗戦、そして新時代の幕開け
2021年、コロナ禍の影響が続き、外国人選手の招聘が難しい中、RIZINは6月13日に東京ドーム大会「RIZIN.28」を開催。ホベルト・サトシ・ソウザがトフィック・ムサエフを破り初代ライト級王座を獲得した。さらに「ボンサイ柔術」のチームメイトであるクレベル・コイケが朝倉未来を破り、フェザー級のトップ戦線で活躍。彼らの「極める柔術」は、RIZINに新たな風を吹き込んだ。
また、PPV配信に特化したRIZINの新しい大会「LANDMARK」シリーズを開始。メインイベントの朝倉未来vs萩原京平ではU-NEXTのサーバーがダウンするなど人気の白熱ぶりを見せた。
2022年はRIZINのさらなるスケールアップの年となった。年末の総合格闘技大会とは別に、夏の特別大会「超RIZIN」が開催される。ここでは朝倉未来と無敗のボクシング王者フロイド・メイウェザーがボクシングルールで激突。メイウェザーが2R KO勝利を収めるという衝撃的な結末は、国内外のメディアで大きく報じられた。
また、女子格闘技界では新女王が台頭。2021年大晦日のデビュー戦で浜崎朱加に勝利した伊澤星花が、その勢いのまま2022年4月の再戦でも勝利を収め、RIZIN女子スーパーアトム級王者に。キャリア無敗のまま、女子格闘技界のトップへと登り詰めた。
そして大晦日、RIZINは北米の強豪団体ベラトールとの全面対抗戦を実施。結果はRIZINが全敗という屈辱を喫し、世界との熱い壁を痛感した瞬間となった。
【2023年~2024年】新時代のカリスマと受け継がれる熱狂
2023年、RIZINは初の2週連続開催を行い、そのメインを朝倉兄弟が務めるなど、揺るぎない人気を示す。さらに、鈴木千裕がベラトール王者を撃破。主要選手の欠場により鈴木が大会5日前に急遽受けた試合であったことから、最高の大番狂わせとして話題に。その三か月後、初の海外興行となったアゼルバイジャンでヴガール・ケラモフを破り、最年少フェザー級王者となった。また大みそか、堀口恭司はフライ級王座を初獲得し、RIZIN史上初の2階級制覇を達成した。
2024年、7月のメガイベント「超RIZIN.3」では、朝倉未来 vs 平本蓮の5年越しの因縁マッチが行われ、観客動員数4万8117人というRIZIN最多記録を更新。さらに、ボクシング世界8階級制覇王者のマニー・パッキャオが参戦し、大会は歴代最高のPPV売上を記録した。
また、RIZINは海外との連携を強化。アメリカのベアナックルボクシング団体『BKFC』や、ヨーロッパ最大の総合格闘技団体『KSW』と業務提携を発表し、選手の交流と共同プロモーションを本格化。堀口恭司が前Bellator王者のセルジオ・ペティスに完勝するなど、世界トップクラスの強豪との対戦を日常化させている。
10回目の大みそか大会「RIZIN DECADE」では、フェザー級タイトルマッチで鈴木千裕がクレベル・コイケと対戦。激闘の末、クレベルが王座に返り咲くという劇的なフィナーレを迎えた。
【2025年~】カリスマの帰還と“最強”への挑戦
旗揚げから10年を超え、数々の名勝負と感情むき出しのドラマを紡いできたRIZIN。朝倉海はUFCへと旅立ち、レジェンドたちから受け継がれた熱狂は、鈴木千裕、平本蓮、伊澤星花といった新時代の旗手たちへと確かに受け継がれていた。しかし、その中心にいたのは、やはり「路上の伝説」朝倉未来だった。
2024年の平本蓮との一戦で一度は引退を宣言していた朝倉未来だったが、格闘家としての魂がそれを許さなかった。リマッチへの意欲を胸に引退を撤回。平本の負傷で実現こそ敵わなかったものの、5月のビッグイベント『RIZIN男祭り』で、鈴木千裕を相手に壮絶な激闘を制し、ついに完全復活を遂げる。
さらに勢いは止まらない。7月の『超RIZIN.4 真夏の喧嘩祭り』では、4年越しの因縁の相手、クレベル・コイケへのリベンジを達成。この勝利によって、朝倉未来は過去の遺恨を全て断ち切り、フェザー級のベルト戦線へ名実ともに名乗りを上げた。カリスマが再び輝きを取り戻した瞬間だった。
しかし、朝倉が希望の光を見出したその裏で、フェザー級の序列を根底から揺るがす「絶望的な影」が広がっていた。ラジャブアリ・シェイドゥラエフの台頭である。「キルギスの鷲」は、復活したケラモフや、朝倉が苦戦してきた強豪たちを相手に、人外じみたフィジカルと、一度捕らえたら逃がさない地獄のグラップリングで、次々と完全決着を重ねていく。
打撃の展開すら許さず、組まれたら最後という絶望感は、彼が「攻略不可能な怪物」であることを証明した。シェイドゥラエフは、日本のエースたちが築き上げてきた歴史と序列をたった一人で破壊し、最強の侵略者として君臨した。
全てのドラマは、大みそかの大一番『RIZIN 師走の超強者祭り』(12月31日水曜、ABEMAほかで配信)へと収束する。大会のメインイベントは、絶望から蘇り、宿敵を乗り越えた朝倉未来と、何者にも止められない絶対強者・シェイドゥラエフの頂上決戦。
師走の夜、時代を懸けた最終決戦へ。
RIZINは、単なる試合の連続ではない。それは「最強の夢」を求め続ける選手たちの人生そのものだ。カリスマの復活か新時代の到来か、この最終決戦こそが、格闘技という名の炎をさらに燃え上がらせ、RIZINの未来を決定づける、歴史的な分水嶺となるに違いない。

ABEMA PPV 『Yogibo presents RIZIN師走の超強者祭り』概要
配信日時:2025年12月31日(水)13時~ (配信開始12時30分~)見逃し配信:2026年1月12日(月)23時59分まで
▼配信チケット購入ページ
https://abema.tv/live-event/c2532fff-d946-4387-857a-668992fa3b56
※上記チケット購入ページからは、見逃し配信・追っかけ再生の視聴ができません。
【見逃し配信】専用ページにて見逃し配信・追っかけ再生が利用いただけます。
▼配信チケット/販売期間
前売りチケット販売期間:2025年12月4日(木)12時~12月30日(火)23時59分まで
▼配信チケット/券種
【視聴チケット】 7,500円(税込)※アプリ購入では700円の手数料が生じます。






























