12月2日に放送された「プロ野球 レジェン堂」(毎週火曜夜10:00-10:55、BSフジ)。今回のゲストは、1985年の阪神タイガースを日本一へと導いた最優秀救援投手・中西清起。MCの徳光和夫、遠藤玲子とともに、甲子園での栄光、社会人野球時代、さらに伝説のバックスクリーン3連発の裏側まで、貴重なエピソードをたっぷりと語った。
船に乗っていた少年がエースへ…小さな漁師町で育まれた強肩と反骨心
高知県の港町・宿毛に生まれた中西。実家は漁師で、幼少期から当たり前のように船に乗って育った。小さな町だったため野球チームの人数が足りず、急遽助っ人として呼ばれたのが野球を始めるきっかけだったという。当初のポジションは憧れの長嶋茂雄と同じサード。強肩が光り、中学では投手に転向することになったが中西本人は「ピッチャーは嫌だ」と拒んでいた。
それでも中学の県大会で登板すると、いきなり優勝。3年生の頃には高知・愛媛の強豪校がスカウトに訪れ、その中には後に名門となる明徳義塾の名前もあった。最終的に地元の高知商業へ進学し、1年生から背番号11をつけてベンチ入り。夏には早くも甲子園のマウンドを踏んだ。
1年夏の決勝で対戦したのはPL学園。9回表まで2-0とリードしながら、9回裏に逆転を許して準優勝に終わった。この試合で登板機会がなかった中西は、「ここは俺がリリーフしたら勝ってたやろ」と思えるほど自信に満ちていたという。その言葉を裏付けるように3年春の選抜ではエースとして5試合すべてを投げ抜き、決勝では延長10回の末に帝京を1-0で破って優勝。高知商業が春夏通じて唯一、甲子園優勝を飾った大会となった。
ドラフトを巡る波乱と社会人時代…そして阪神1位指名へ
高校卒業を控えた中西のもとには広島以外の11球団がスカウトに訪れたが、本人は明治大学への進学を希望していた。だが途中から「阪神か中日に指名されたら行きたい」という気持ちが芽生え、これが島岡監督の耳に入って「そんな両天秤にかけるような選手はいらん！」と激怒を買うことに。大学進学は白紙に戻ってしまう。
そこで高知商業のピッチングコーチの勧めもあり、ミシンメーカーのリッカーへ入社して社会人野球の道へ。1981年の都市対抗野球では津田恒実と対戦しており、中西は「速かったですね。高めの球はすごい速かった」と振り返った。
その後、1983年に阪神タイガースから1位指名を受けプロ入り。当時の阪神には工藤一彦、山本和行、伊藤宏光ら強力な投手陣が揃っており、キャンプで彼らの投球を目の当たりにした中西は「速いし、これはちょっと勝てないかもしれない」と弱気になったという。1年目は33試合に登板したが1勝6敗、防御率5.35と苦しんだが、翌年にはリリーフへ転向して才能が開花する。
1985年4月17日、歴史に残るバース・掛布・岡田による「バックスクリーン3連発」。その試合こそ、中西のプロ初セーブだった。中西は「あの時、逆3連発を食らいそうになったんですよ」と語り、遠藤が「改めて見ると接戦の試合だったんですね」と驚く場面も。9回表に巨人のクロマティ・原が連続アーチ。その直後に登板した中西は、中畑をレフトフライ、吉村・駒田を連続三振で打ち取り、6-5で阪神が逃げ切った。
阪神は21年ぶりのリーグ優勝を果たし、中西は胴上げ投手に。63試合登板、11勝3敗19セーブ、防御率2.67という優秀な成績を収め、2年目にして最多登板と最優秀救援投手のタイトルも手にした。当時の阪神というチームの雰囲気について聞かれると、中西は「関西そのものですよね。中西・平田・木戸の“NHKトリオ”の耳に入ると、話がブワーっと広がる」と笑いながら振り返る。掛布、岡田、バース、川藤らスター選手の素顔も赤裸々に明かした。
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