
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、漫画『ナニカシイラ短編集』(ナンバーナイン刊)より、『洞窟の恋』を紹介する。ナンバーナインが主催する創作百合フェスタ公式アカウントが12月1日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、3000件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、『デキアイ 伝え!電子楽器倶楽部』(ミュージック・コミックス刊)でも知られる作者のナニカシイラさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
事故の果てに辿り着いた真実

人に恋をしたことがなく、好きなものは現実にないものばかりの女性・叡佳。彼女は、自分に想いを寄せてくれる女性・絵莉の気持ちに、いつか応えることができるのだろうかと考えながら同棲を続けていた。
そんなある日、絵莉は叡佳に「好きだよ!!」と想いを伝えた直後、事故に巻き込まれて亡くなってしまう。しかし、その光景を見た叡佳は「私も好きだ…」と呟き、ある“真実”に気付く…。
このひとつの真実に辿り着いた漫画を読んだ人たちからは、「美しい愛だ…」「性癖の開花を確認した」「共感できすぎる」など、多くのコメントが寄せられている。
「自分らしさが最も素直に出ているコマだと思う」作者・ナニカシイラさんに漫画創作へのこだわりをインタビュー

―― 本作を創作したきっかけや理由があればお教えください。
「いかなる愛も、最終的には自己愛に帰結する」という持論がある。また「変化しにくいものに依存せよ」という、ある種の安全思想も持っている。この二つの考えが極端なところまで行き着いた結果、「変化しない愛とは、いったい何なのか?」という問いを突き詰める物語に至ったのである。
―― 本作では、「洞窟の比喩」を絡めた展開が非常に印象的でした。「こだわった点」「注目してほしいポイント」を教えてください。
プラトンの「洞窟の比喩」では、光が真理の象徴として描かれる。しかし本作では「より変化しないものとは何か?」という視点に立つことで、ひとつの逆転を試みている。それは、光そのものではなく「光が影を結ぶ原理」や「光よりも先に存在する闇」の方こそが、より不変なのではないか、という発想である。発光源が何であれ、影が生まれる原理は変わらない。これが本作の主人公の“発見”である。彼女は永遠の愛を求めるあまり、不確定な未来を含む関係ではなく、確定した過去の状態にのみ存在しうる愛へと傾いていく。もちろん現実的には、その愛は恋人の死によって保持されるものではなく、本来は断絶されるものである。ここは主人公の誤謬であるが、彼女自身も無意識のうちにその破綻を理解しているのか、やがて次の愛を求め始める。これは同時に「思想」という力を持った者が暴走し、一種の“化け物”が誕生する瞬間でもある。「洞窟の比喩」では、松明から太陽へと至り真実を知るが、彼女は松明の灯りが消えたことで、“闇という真実”に気づいたのだ。
―― 特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
6ページ7コマ目に登場する、ペースレイヤリングの図の引用(スチュアート・ブランド著『How Buildings Learn』1994年)の場面が気に入っている。漫画としては面白げがないコマであるが、自分らしさが最も素直に出ているコマだと思う。
―― 普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか?
基本的に「物語の目的」からはじめ、抽象から具体へと考えている。工学系の経歴のほうが長いため、どうしても「目的」「要求」「仕様」という順序で物事を組み立てたくなる性分があり、物語でもその癖が出ている。「物語の目的」には、自分が考える「幸福の形」を、煮詰めたり、時にねじ曲げたりしながら落とし込んでいる。
―― 今後の展望や目標をお教えください。
まだまだ漫画は初心者であるため、もうしばらくは描き続けていきたいと考えている。また、インタビューの応答からも分かる通り、絵を描くこと以上に「考え事」をするほうが好きな人間であるため、将来的には漫画原作ができれば幸福である。一方で、絵が好きだと言ってくださる方もいるため、どうバランスさせるかは一考すべき課題でもある。
―― 作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
楽しみにしてくれているみんな、本当にありがとう!僕はあなたの「好き」を肯定します!だから、少しだけでも、僕の「好き」もあなたが肯定してくれたらうれしいです。
この記事はWEBザテレビジョン編集部が制作しています。

































