道明寺は「気付いたら、主役に踊り出てきてしまった」
ーーちなみに、先生自身が今ハマっている漫画はありますか?
漫画を読むのは今も大好きなのでよく読んでいます。最近だと「チ。-地球の運動について-」が面白かったです。仕事先の方から「地動説と天動説のお話だ」と紹介されて、すぐに全巻購入し、一気に読みました。ああいう難しいテーマを扱っている漫画は読んでいてとても勉強になりますし、学びがある作品というのを私はあまり描いたことがないのですごく憧れます。ただ面白いだけというのももちろん好きですが、知らないことが知れることがいいなと思いました。あとは「ゴールデンカムイ」も好きです。あれを読んで、熊が怖くなりました (笑)。
ーー本エッセイを読んでいて、「花男」の誕生秘話にも衝撃を受けました。元々は花沢類が
ヒーローポジションだったということですが、どのあたりから道明寺司がヒーローポジションに切り替わったのでしょうか?
あんなにクルクルした髪型のキャラクターがヒーローだなんて、ありえないですよね(笑)。初めは本当に悪役として登場させたので、すごく嫌な人間でした。でも、少女漫画なので、ただ意地悪なだけの救いようがないキャラクターではダメだなと。読んでいる人が怖いじゃないですか。だから、小学生の男の子が好きな子に意地悪をするような、ちょっとバカっぽい感じに変化させていったんです。そうしたら、すごく一途な男の子に変化してきて、私も描いていくうちに道明寺がかわいくなってきたんですよね。気付いたら、主役に踊り出てきてしまったという感じです(笑)。
ーーでは、「ここから切り替えよう」というような、明確なタイミングがあったわけではないのですね。
主人公の(牧野)つくしが他の人たちからいじめられる、道明寺が俺だけがいじめていいんだよ、とつくしを庇っていく。どんどん道明寺がつくしを本気で好きになっていく。その辺りからでしょうか。それでも、花沢類がつくしの相手役になるという余地はずっと残しておいたんです。類のことも丁寧にキャラクターをつくっていたので。でも、道明寺が思いがけず育ってきてしまったというのが正しい言い方ですね。
私だけじゃなくて、長く連載されている漫画家さんには、描いているうちに「あれ? こっちの方がいいんじゃないか?」と、方向転換する方は他にもいらっしゃると思うんです。私は連載中、20巻ぐらいまでは花沢類か道明寺かという余地を残しておきました。どちらを選ぶか、この先のエピソードで変化があるのではないかと思っていたからです。当時、読者から「もう絶対に花沢類!」「なんで道明寺なの?」というお手紙をすごくたくさんいただきました。大人の女性は道明寺が好きな方もいらっしゃいましたが、年齢が若ければ若いほど花沢類が人気でしたね。
「どうしてもキャラクターに“癖”をつけてしまう」
ーー私はそんな道明寺の“愛すべきバカ”さが大好きです。どうしてあんなに絶妙な面白さと愛くるしさのおバカさがナチュラルに描けるのでしょうか?
ありがとうございます(笑)。間が抜けているアホっぽさみたいなものを入れていこうかなと思ったんです。文字が読めないとか、ことわざを間違える、とか。見た目は怖いのに抜けているところにギャップをもたせたのが良かったのかもしれないですね。
ーーでは、特に何かを参考にしたわけではなく、神尾先生の中から自然に生み出されたということでしょうか?
自然にと言いますか…私自身も初めの方は読んでいて道明寺がちょっと怖いなと感じていたので。その息詰まるようなシリアスさに少し穴を開けて空気を入れてあげるような、隙がある感じにしたいなと思ったんです。好きな女の子にはすごく弱い男の子みたいな感じをイメージしていったら、あの道明寺になっていきました。
ーーそんな神尾先生は、道明寺はもちろん花沢類も含めて「花男」の“F4”は誰もタイプではないと言っていましたが、一体どんな男性に心を惹かれるのでしょうか?
すごく普通の答えで申し訳ないのですが(笑)。ブラッド・ピットが好きです。単純にビジュアル的に綺麗だな~と。今も渋くて素敵ですが、もう少し若い頃の彼が、どストライクでした。
ーー世界のブラピですもんね。でも、神尾先生の作品にはブラッド・ピットのようなストレートにカッコいいキャラクターは登場しない印象があります。
どうしてもキャラクターに“癖”をつけてしまうんですよね。類も、ただカッコいい王子様というわけではなくて、ちょっとつっけんどんじゃないですか。なんとなく私の癖で、登場人物をストレートな設定にはしないところがあるかもしれませんね。






























