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作者・神尾葉子が語る『花男』秘話 道明寺司と花沢類の間で「20巻まで揺れた」ヒーローの座

2025/12/19 18:00

「“漫画は漫画、ドラマはドラマ”と割り切っている」


ーー「花男」は社会現象を起こすほど大ヒットしたドラマをはじめ国内外問わず、多くメディア化されています。他の作品もメディア化が相次いでいますが、神尾先生はメディア化の際には、基本的には相手側に委ねて自身とは距離をとっている印象でした。なぜその距離感を保つことができるのでしょうか?

理由はいくつかあります。まず一つは、原作者の言葉というのはすごく強いので制作の方たちに「これは嫌です」と言ったら、その言葉はとても重く響くと考えています。ただ「嫌だ」と言いっ放しにするのではなく、「こうしてください」「もっとこういう要素を入れてください」と代替案を出すのが責任ある態度だと思っていて。私の場合、メディア化されていた時期は連載でとにかく忙しくて、制作に原作者として加わるのは無理だったというのもあります。

ラッキーだったのは、その時々の制作チームの中に、原作をめちゃくちゃ読み込んでくださっていて、「大好きです」という方が必ずいらっしゃったんです。海外でのメディア化の時も同様でした。だから、「それならもう預けてしまおう」と信頼して、全面的にお任せしていました。あとで脚本を見せていただくこともありましたが、ほぼ口を出したことはありません。それだけ、驚くような改変はされていなかったということでもありますね。

ーー日本のメディア化と、海外各国のメディア化で違いはありましたか?

一番大きな違いは“長さ”ですね。日本のドラマはだいたい9話から10話くらいですよね。でも、たとえば中国や台湾、タイなどは一つのタイトルが長いです。中国にいたっては50話くらいあるんです。だから、すごく原作に忠実に作ってくださっていたと思います。

私が「そうしてください」とお願いしたわけではないのですが、尺がたっぷりある分、原作通りに作られていることが多い印象でした。エピソードが大幅にカットされることも少ないですし、登場人物が統合されるようなこともあまりなく、原作にそったそれぞれのキャラクターが出てくるのも楽しかったです。

ーーでは、国内外問わずメディア化のメリットとデメリットは感じましたか?

デメリットというのはほとんどないのですが、強いて言えば“ドラマは決められた回数で終わらせなければいけない”ということですね。連載が続いていても、ドラマは全9話などで完結させなければいけません。これはテレビドラマの性質上、当たり前のことなので、最後がドラマ独自の終わり方になるのは「そういうものだよね」と思っていました。

読者の方の中には「原作通りにやってほしかった」という方ももちろんいらっしゃったと思いますし、実際に私もそういう声は聞いていました。でも、私は「漫画は漫画、ドラマはドラマ」と割り切っていて、皆さんにもそれぞれ別物として楽しんでいただけたら一番うれしいなと思っています。

「(つくしを)類の方へ戻そうとするけど、どうしても道明寺の方へ行ってしまう」


ーーお話を聞いていても、本エッセイを読んでいても、神尾先生自身と作品自体との間にも一定の距離を取っているように感じました。

漫画を描いていた時は、四六時中その登場人物たちのことばかり考えていました。私が彼らのことを考えている以上、それぞれの登場人物全員に“私”という人間が入っていると思います。私が描いていますが、常に俯瞰する自分がいて、自分が読者になった目で「こういう展開になったら面白いのでは?」ということを考えて作っていました。その展開の中に登場人物たちを入れて動かしていく、という作り方をしていましたね。

――なるほど。私は、特に少女漫画は主人公に作者の方の主観、いわゆる一人称的な視点を入れているのかなとイメージしていたので驚きました。

もちろん主人公に一番自分を入れてはいます。当時は隔週連載だったので、とにかく「続きが気になる話にしよう」と思っていました。2週間に1回発売されるので、次号も買ってもらえるような、楽しみにしてもらえるような展開を常に目指していたんです。よく「少年漫画っぽい」と言われるのですが、次から次へと新しい展開が出てくるようにお話をどんどん転がしていくような作り方をしていました。

ーー人物の視点からではなく、まずストーリー全体の“箱”、枠組みを作っているということですね。少女漫画的な作り方と少年漫画的な作り方、両方をミックスしていたからこそ、少年漫画好きの方もハマる少女漫画になっているのでしょうね。エッセイには、ストーリーを作っていく中で「登場人物たちが勝手に動き出していく」とも書かれていて、とても興味深かったです。

私だけではなく、おそらく世の中の漫画家は皆さんそうだと思うのですが、だんだん魂を込めていくと、キャラクターが勝手に動いていくようになるんですよね。彼らの動きに合わせて、私がストーリーを構築していく、という感覚です。

ーーちなみに「花男」を描く中で、登場人物が意図せず動き出して一番困ったことを教えてください。

それはもう、つくしですね。気持ちが花沢類から道明寺へ、ぐーっとシフトしていってしまって。私は一生懸命、花沢類の方へ戻そうとするのですが、どうしても道明寺の方へ行ってしまうんです。だから、「そんなに苦労したいんだね。まあしょうがない」と思いながら描いていました(笑)。

下に続きます
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神尾 葉子 (著)
KADOKAWA
発売日: 2025/12/11
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  • 【画像】「花より男子」などの漫画家・神尾葉子氏
  • 「花より漫画」神尾葉子

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