又吉直樹と西野亮廣 対談「『好きを追求すること』と『その代償』」(連載最終回)
又吉 たぶん西野くんもそうやと思うんですけど、他の人が努力としてることを、僕らは努力と思わずにやってると思うんですよ。作業時間がめっちゃ長いとか、絵を描いてると五時間とか六時間とかやらなあかんやろし、僕も文章書いてたら、ほんま寝ずにやるみたいなことも楽しさの中に含まれてるから。それがあると、なんとか生きていける。
西野 僕もおんなじ。収入には興味がないけど、楽しいことを取り上げられると全然ダメ。それがあるから生きていける。もう楽しいことしかしたくない。楽しいことしかせずに、楽しいことだけで生きていけると思って、そもそもこの世界に入ったわけだから。
子供の時に『加トちゃんケンちゃん』とか見て、我慢なんかしなくていいんだって思ったんですよ。遊びながら、朝から晩までずっと遊びながら、おいしいご飯も食べれて、いい生活もできて、めっちゃいいじゃんと思って、浅はかな考えで入っちゃったから。それは最後までやるっていう。
又吉 サッカーでいいプレーしようと思うたら、やっぱ走りこまな体動かへんし、練習せなあかんしみたいなのはあるとは思うんだけど。西野くん、そういうのあんの?
西野 途中の苦労っていうのは、僕あんまりないんだけど、好きなことをしちゃうと背負わなきゃいけない代償みたいなものはありますね。つまり、周りの人が好きなことをやむを得ず、折り合いをつけて辞めていくことってあるじゃない? 周りはみんな折り合いつけて辞めて、でも僕は続けて、周りが辞めた恩恵も受けたりして、なんかうまくいっちゃうとか。
そうなると、この人たちからすると具合が悪いじゃないですか。お前も折り合いつけろよって。そういうエネルギーは痛いほど来ますね。でも、好きなことをやろうと思ったらそれは背負わなきゃいけないんだなっていう。
又吉 それはもう、めっちゃあると思う。特に西野くんは。僕はまだ、今のところは大丈夫かもしれないですけど。西野くんとか見てたら、僕もちょっとだけ思いますもん、「それできんねや」みたいな。できんねやったらやりたかったけど、みたいなのは、みんな思うと思うから。それ見せられると、以前やりたかった人がみんな、ちょっと傷つくんですよ。
「大人になったらわかる」っていう言い訳が通用しなくなる瞬間っていうか、「大人になってもわからん」とやった結果、突き抜けれる奴がいたんやっていうのを目の当たりにするのはしんどいから。西野くんはその人たちから、何かしら食らうと思う(笑)。
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