話題性、視聴率ともに好調のまま、6月30日(土)の放送で“折り返し地点”を迎えた連続テレビ小説「半分、青い。」(毎週月~土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか)。岐阜に生まれたヒロイン・鈴愛(すずめ、永野芽郁)は、漫画家を目指して上京。念願かなってデビューを果たすも、スランプに苦しむ日々が続いている。
透明感とバイタリティーあふれるヒロイン・永野芽郁が着実に“国民的女優”へとなりつつある一方、“完璧”とは程遠い鈴愛のヒロイン像は、本作に“規格外の朝ドラ”という印象を与えている。
そんな「半分、青い。」の異色さや、王道にこびない潔さは、3月に公開されたポスタービジュアルから一貫していた。
ポスター撮影を担当したのは、世界的写真家のレスリー・キー。実は、レスリーは“朝ドラ”に並々ならぬ思いを抱いており、本作を手掛けるに至ったのも、局側からのオファーによるものではなく、自らコンペに参加した上でのことだった。
なぜ、レスリーが“朝ドラ”ポスターに名乗りを上げたのか、ポスター完成までの道のり、そして「半分、青い。」への思いを聞いた。
──“朝ドラ”に強い思い入れがあるとうかがいました。
きっかけは「おしん」(1983〜84年)ですね。(出身地の)シンガポールで孤児院にいた、13歳の時に見たんです。今でもはっきりと覚えていますが、まずは北京語の字幕付きで放送されていたものを一通り見て、その後、英語やマレー語、ヒンドゥー語などのバージョンでも放送が始まったので、もう一度見直したんです。「おしん」は、シンガポールでも大人気でした。
(日本では)1年間かけて放送されていましたよね? そういう作品は、他にもありますか?
──「春よ、来い」(1994〜95年)などがありますが、めずらしいですよね。
「春よ、来い」! 懐かしいなぁ、(主題歌が)ユーミン(松任谷由実)のだよね!
ちょうど日本に来た年だから、毎朝リアルタイムで見ていました。忘れられないですね。
──そんな“朝ドラ”への思いの強さが、今作でポスターを手掛けることにつながるのでしょうか?
そうです。でも、そもそも「半分、青い。」のポスターのコンペの存在を知ったのは、他にもいろんな縁があったからで。
たまたまNHKの別の番組でお仕事をしていたことや、北川悦吏子さんから「宣材写真用のポートレートを撮ってほしい」と頼まれていたことなどがきっかけで、「今度、朝ドラのポスターのコンペがあるらしい」という情報を知ったんです。
それでそのコンペに参加しようと思ったんだけど、「半分、青い。」のヒロインが僕と同じ1971年生まれだという設定を聞いて、「これは運命だ」と思いましたね。もっと言うと、鈴愛が片耳が聞こえないというハンディキャップを抱えて上京するのと、私が日本語を話せないというハンデを持って東京に来るのが、同じくらいのタイミング。いっそう、「この作品のポスターを撮りたい!」と思いました。
──クリエイティブディレクションとして森本千絵さんが参加されたのは、どのような経緯からですか?
良い写真を撮るのは当たり前のことだから、アートワークでも面白いものを、と思ったんです。私は千絵さんに、同世代のなかでクリエイティブな女性の第一人者、というイメージがあります。「半分、青い。」はクリエイティブな世界で戦う女性の物語だから、千絵さんにダメ元でお声掛けしました。千絵さんの作る世界には、必ず“サプライズ”があります。彼女と一緒に作れば、普通でないものができると思いました。
2人で一緒にNHKに行って、コンペの説明会から参加して、プレゼンをしたんです。お互いにとって、初めての経験だったと思いますね(笑)。
──森本さんとは、どのようなコンセプトにしようと話されたのですか?
私は彼女の作る世界を楽しみにしていよう、と思っていたのですが、一つだけ「躍動感を出したい」というのは伝えました。
過去10年分の“朝ドラ”のポスターを見たんですけど、8割方が大人しいんです。躍動感のあるポスターなら、みんなに元気を与えられると思いました。
──具体的には、どんな案が出たのでしょう?
躍動感を出す方法って、いっぱいあるんです。やわらかい洋服を着て跳んでもらうのもいいし、下から撮影して、人が浮いているようにすることもできます。
でも、結局、ジャンプしているヒロインを上から撮影することにしました。こんな撮り方は、人生で初めてです。