ゴッホ、バスキア、フェルメール...芸術の秋に観たい偉大なる画家たちの伝記映画<ザテレビジョンシネマ部>
芸術の秋、2019年も各地で魅惑的な美術展が開催・予定されている。2018年のフェルメールに続き、ゴッホ、クリムトそしてエゴン・シーレとそうそうたる名画が日本にやって来る。
こうした芸術作品は、ただ観るだけでもいいものだが、予備・周辺知識があればより深く味わえる。たとえば画家の伝記物などアート映画は、それ自体も面白い上に、個展の予習にもぴったりではなかろうか。
彗星のごとく現れたアーティスト ジャン=ミシェル・バスキア
この秋最も話題を呼びそうなのが、日本初の大規模展が行われるジャン=ミシェル・バスキアだ。1980年代のニューヨークにさっそうと現れ、白人優位だった当時のアート・シーンに、有色人種(プエルトリコとハイチにルーツをもつ)として新たな地平を切り開いた。
街中の壁にスプレー・ペインティングでカラフルな絵を描き、独特の詩を添えた。そんな彼のアート、グラフィティは誰もが目にしたことがあると思うが、そこに込めた思いを知るには伝記作品『バスキア(1996)』(9月10日夜7:00 WOWOWシネマほか)から観るのが良いと思う。
ジェフリー・ライト演じるバスキアはじめ、アンディ・ウォーホル役のデヴィッド・ボウイ、デニス・ホッパー、ゲーリー・オールドマン、クリストファー・ウォーケンなどなど、伝記物としては異例なほどに芸達者なスターが揃っており見応えがある。
ホームレス生活だったバスキアが、いかにアート・シーンに食い込み、栄光を手にし、そして27歳で薬物中毒死したのか。
ジュリアン・シュナーベル監督は本作の冒頭で、生涯貧困画家だったファン・ゴッホを、バスキアの生涯を運命づけた存在として示唆している。つまり、ゴッホを見出せなかったトラウマから、美術界がバスキアの運命に過剰に介入しすぎたこと、それこそが彼の悲劇につながったのではと解釈している。分かりやすいし、107分でバスキアの人生を俯瞰するにはとてもいい映画だ。